トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(DJT)は、自社株に対する空売り活動の透明性を問うべく、米証券取引委員会(SEC)に正式な調査を依頼した。調査の焦点は、英Qube Research & Technologiesが開示した約1億500万ドル相当の空売りポジションにあり、違法な無担保空売りの可能性も指摘されている。

これを受けてDJT株は4月17日に約12%の急騰を見せ、株価の不安定性が再び注目された。過去にも同社は市場操作の疑念を理由に複数の金融機関へ圧力をかけてきた経緯がある。空売り残高の推移や過去のナスダックによる不適正取引銘柄リスト掲載歴も、TMTGの問題提起を裏付ける材料として挙げられている。

一方で、Qubeは定量モデルに基づいたポジションと主張し、個別企業への評価とは無関係と反論する。こうした対立が投資家心理に与える影響は無視できず、政治的文脈とSNS事業の先行き不透明感が交錯する中、DJT株は投機的色彩を強めている。

空売り調査要請がもたらした市場の反応とQubeのポジションの影響

トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(DJT)は、英国拠点のQube Research & Technologiesが開示した約1億500万ドル規模の空売りポジションを受け、米証券取引委員会(SEC)に調査を要請した。これによりDJT株は2025年4月17日に約12%上昇し、市場の関心が一気に高まった。

Qubeの空売りはドイツで開示されたこともあり、米国内での透明性が疑問視されているほか、ナスダックやNYSEは取引の正確な実行時期を特定できなかったとされている。これに関連して、DJTの空売り残高は約1,100万株と安定的に推移していたにもかかわらず、短期間での株価変動が投資家の注目を集めた。

同社は違法な「ネイキッド・ショート・セリング」(無担保空売り)の可能性も示唆し、過去にはナスダックの「不適正取引銘柄リスト」に2ヶ月以上掲載されていた経緯を持つ。こうした点を根拠に、TMTGは市場の公正性を改めて問い直している。一方でQube側は、自らの取引が企業の価値判断に基づくものではなく、あくまで数量化されたモデルに従って構築された戦略であると説明している。したがって、この空売り自体が直接的にDJTの企業価値を否定したものとは限らない。

このような動きは、近年話題となったミーム株と類似した展開を見せており、空売り筋への攻勢が一時的な買い材料として作用する構造が再び現れた形である。ただし、株価の短期的な反発が本質的な企業評価を変えるものではないことに留意する必要がある。

赤字企業としての構造的課題とTruth Socialの成長限界

トランプ・メディアは2023年第3四半期に売上が前年同期比で減少しており、現在も継続的な赤字状態にある。主力事業であるTruth Socialは、競合するSNS企業と比べてユーザー数が極めて限定的であり、収益の柱としての機能を果たせていないのが現状である。また、同社はTruth Socialの派生事業としてストリーミングサービス「Truth+」や金融プラットフォーム「Truth.Fi」への拡張を試みているが、これらの新規分野が黒字化する見通しは明確でない。

投資家にとって問題となるのは、これらの事業がいずれも確固たるビジネスモデルとして確立されていないことである。収益構造の脆弱性は、政治的影響力を背景にした注目を一過性のものに留め、長期的成長の裏付けにはならない。また、同社にはBarchartの追跡に基づくアナリスト評価が一切存在しておらず、市場からの独立した評価指標が不足している点も課題として浮上する。

仮にTruth SocialがSNS市場で一定のシェアを獲得するにしても、その成長には大規模なユーザー基盤と広告主からの信頼が必要であり、現時点でその条件が揃っているとは言い難い。トランプ前大統領という象徴的存在が注目を集める一方で、事業の本質的価値と財務的持続可能性については慎重な再評価が求められる状況にある。

Source:Barchart.com