2025年第1四半期、世界のPC出荷台数は前年同期比で6.7%増加し、Lenovoが11%の伸びで首位を維持した。背景にはWindows 10のサポート終了と、米国の対中関税政策への懸念がある。ユーザーの買い替え需要が一気に加速し、AI対応PCの登場も市場拡大を後押しした。
ただし、CounterpointやCanalysの分析によれば、この急増は一時的な現象であり、政策の不確実性や高価格化が今後の需要を抑制する可能性がある。OEM各社は供給網や製造拠点の分散といった対応を進めつつ、AI体験の最適化を図る動きを強めている。
PC出荷増の主因はWindows 10終了と米中貿易政策への警戒感

2025年第1四半期における世界のPC出荷台数は、Counterpoint Researchによれば前年比6.7%の増加を示し、特にLenovoが11%増で市場の牽引役を担った。この背景には、Windows 10のサポート終了が2025年10月に迫る中、多くのユーザーや企業がアップグレードを迫られている事情がある。Windows 11は厳格なシステム要件を課しているため、従来のデバイスでは対応できないケースが多く、新規購入の動機を生み出した。
加えて、米国が導入を示唆する対中関税の影響も無視できない。PCメーカーは関税が価格に及ぼす影響を見越して、先行的に出荷を増加させる戦略をとっており、OEM全体での供給調整が急速に進んだ。これにより、HPやDellもそれぞれ6%、4%の出荷増を記録している。Canalysの調査も同様の傾向を報告しており、異なるデータソースながら、共通して需給の変動を示唆している点が注目される。
一方で、こうした急増は一時的な買い替え需要によるものであり、今後の成長が持続する保証はない。市場関係者の間では、政策の不確実性や過剰在庫によって、第2四半期以降は出荷が鈍化するとの見方が出ている。Windows 10の終了という不可逆的な要因と、関税政策という外的リスクの組み合わせが、今期の異例の出荷拡大を形成したと考えられる。
AI対応PCが市場成長の新たな軸に エコシステム構築が成否の分岐点
AI機能を前提とした新型PCが出荷増加の一因となっている。Counterpointは、AI PCがユーザーの注目を集めている点を指摘し、特にMI(マシンインテリジェンス)向けの専用コンポーネントを搭載したデバイスが増加していることを強調する。Lenovo Yoga Slim 9iやHP OmniBook Ultra Flip 14といったモデルは、AI演算に適した設計を持ち、PCハードウェアの進化を象徴している。
しかし、関税政策の不透明さは、こうしたAI PCの普及に逆風となり得る。アソシエイトディレクターのデヴィッド・ナランホ氏は、関税が市場に与える萎縮効果を懸念しており、高価格が普及ペースを緩める可能性を示唆している。また、シニアアナリストのウィリアム・リー氏は、AI PCの競争力は単なる製品仕様ではなく、シリコンからソフトウェア、そしてモデルベンダーに至るまでのエコシステムの最適化が鍵になると述べた。
AI対応PCの性能はアプリケーション依存であり、対応ソフトウェアの発展なしには真価を発揮しない。ゆえに、OEM各社にはハードの進化と並行して、AIベンダーや開発企業との戦略的パートナーシップが求められる。現在の出荷増はその入り口に過ぎず、今後の市場成長は、技術連携の深度と普及戦略の巧拙に大きく左右されるだろう。
Source: Windows Central