マイクロソフトは、2025年4月のWindows回復環境(WinRE)アップデートに伴い発生していた誤表示の「0x80070643」エラーについて、修正を完了したと発表した。本不具合は、Windows Server 2022向けのKB5057588、およびWindows 10バージョン22H2・21H2向けのKB5057589に起因するもので、実際にはアップデートの適用自体に支障はなく、再起動により正常に反映されるケースが確認されていた。
マイクロソフトは当初「エラーは無視して構わない」と説明していたが、今後はWindows Updateの設定画面に当該エラーが表示されることはないと保証している。背景には、再起動待機中の他のアップデートが存在する状況下での競合処理があるとされ、ユーザーの混乱を招く要因となっていた。
さらに、同種のエラーを悪用した偽サポートサイトが過去に確認されており、PowerShellを用いた修正手順を装ってマルウェアを配布する事例も報告された経緯がある。今回の修正は、こうしたセキュリティリスクの抑制にも一定の効果が期待される。
回復環境アップデートに伴う誤表示エラーの発生と修正経緯

2025年4月に提供されたWindows回復環境(WinRE)のアップデートKB5057588およびKB5057589において、「0x80070643 – ERROR_INSTALL_FAILURE」のエラーメッセージが誤って表示される問題が確認された。
これは、再起動待機中の別のアップデートが存在する状態でWinREアップデートが適用されると発生し、インストールが失敗したかのように見える仕様であった。だが、実際には再起動を行うことでアップデートが正常に完了しており、実害は伴わないことが後にマイクロソフトから説明された。
この問題はWindows 10 バージョン21H2および22H2、並びにWindows Server 2022ユーザーに広く影響を及ぼしたが、マイクロソフトは発見から2週間で迅速に修正に至った。修正後は、同じ状況下においてもエラーメッセージが表示されることはなくなり、更新プロセスの可視性と信頼性が向上している。
加えて、今回の修正により、ユーザー側で手動の対応を求められる事態は回避されており、Windows Updateの運用上の安定性に寄与する格好となった。
偽サポートサイトによる悪用事例とセキュリティ上の懸念
「0x80070643」のエラーコードを巡っては、過去にも悪用の事例が報告されている。2024年に確認されたケースでは、偽のITサポートサイトがPowerShellスクリプトを用いた修正手順を装い、マルウェアをユーザーにインストールさせる手口が使われた。こうした詐欺的手法は、エラー表示に不安を感じた利用者の心理を逆手に取るものであり、単なる技術的バグにとどまらない社会的リスクを孕んでいた。
今回のマイクロソフトによる修正は、表面上は誤表示対策に過ぎないものの、こうした不正利用の温床を排除するという副次的効果も見逃せない。特に、過去に同社がWinREパーティションの手動拡張を推奨したことでユーザーの負担が増した経緯を踏まえると、不要な警告表示を排除する意義は小さくない。
エラー表示の信頼性が確保されることは、ユーザー体験の質を保つのみならず、サイバー犯罪への防波堤ともなり得るため、更新処理の健全性を維持するうえで重要な一手と評価できる。
Source:BleepingComputer