AMDがRDNA 3世代の新製品として、グラフィックスカード「Radeon RX 9070 GRE(Great Radeon Edition)」の市場投入に向けて準備を進めていると報じられた。情報源となるVideocardzは、PowerColor製のRed DevilおよびReaperモデルの実物画像を公開しており、これにより同製品の2025年第4四半期までの延期説を否定する形となった。公開されたカードはいずれも中国語併記のパッケージであり、中国市場向けである可能性が浮上している。

GREモデルはRX 9070およびRX 9070 XTと同じNavi 48 GPUを採用しつつも、コア数は3,072基、メモリバス幅は192ビット、VRAMはGDDR6の12GBに制限されており、実質的には前世代RX 7700 XTに近い構成となっている。また最大ブーストクロックは2.79GHzで、電源要件は650Wとされる。AMDはこのモデルを正式に発表していないが、スペック上はミドルレンジ市場を狙った合理的な製品構成であることがうかがえる。

RX 9070 GREの構成と冷却設計に見るAIBパートナー戦略の方向性

PowerColorが手がけるRX 9070 GREのRed DevilおよびReaperモデルは、赤と黒を基調とした三連ファンクーラーを採用し、デザイン面でも既存のRX 9070 XT Red Devilと酷似した構造となっている。さらに、両モデルともデュアル8ピン電源コネクタを搭載し、ミドルハイレンジGPUとしては高めの電力供給を前提とした設計思想が読み取れる。これは、同社のクーラー技術と共通設計によるコスト効率化、さらに高TDPへの備えを意味する。

こうした仕様からは、PowerColorが上位モデルと同等の冷却システムをGREバージョンにも適用することで、製品のブランド統一感と性能への信頼性を担保しようとする意図が読み取れる。加えて、パッケージに英語と中国語を併記している点から、初期展開市場が中国を中心とする可能性が浮上するが、これはAIBベンダー各社にとって成長性が見込まれる中国圏に向けた製品差別化と販路拡張の一環とも考えられる。

一方、冷却機構を上位モデルと共有するという設計判断は、仮にRX 9070 GREの発熱量が控えめであった場合、コスト的にやや過剰となる可能性も否めない。しかし、将来的なクロック向上やBIOSアップデートによる性能解放を見据えるのであれば、こうした冷却設計はむしろ合理的な備えといえる。

Navi 48搭載ながら仕様制限を受けたRX 9070 GREのポジショニング

RX 9070 GREは、上位モデルと同じNavi 48ダイを搭載しながらも、アクティブコア数を3,072基、メモリ容量をGDDR6の12GB、バス幅を192ビットへと抑制した構成で登場する見通しである。最大ブーストクロックは2.79GHzとされ、RX 7700 XTと近い技術水準であることが確認されている。これはRDNA 3世代の中で、性能とコストのバランスを取った製品設計として明確に意図されたものである。

AMDはRX 9070および9070 XTを、RX 7800 XTや7900シリーズの後継と位置付けているが、このGREモデルに関しては明確な系譜は示していない。しかし、構成と性能帯から見て、前世代のRX 7700 XTの実質的な後継と見なすことが妥当である。これにより、価格帯と性能の均衡を求める中間層ユーザーに対して、RX 7700 XTと比較した買い替えや新規導入の選択肢を提示している。

スペック制限の背景には、上位モデルとの市場競合を避けつつ、コアの歩留まりや不良部位を回避したGPUダイの有効活用という供給戦略も含まれていると考えられる。そのため、RX 9070 GREは性能を抑えつつも安定供給と価格競争力を担保する、ラインアップの中核を担う製品と位置付けられる可能性が高い。

発表日未定ながら中国市場を意識した先行投入の意義

Videocardzが公開したRX 9070 GREの情報には、同モデルが5月18日にも登場予定のRX 9060 XTより先に投入される可能性が示唆されている。正式な発表はなされていないが、流通経路に近い情報筋による製品画像やパッケージ情報が出回っている点から、発売準備が最終段階に入っていることがうかがえる。特に、現時点で明らかになっているのはPowerColor製モデルに限定されており、AMD自身による公式発表がないままパートナーモデルが先行する構図は注目に値する。

この動きは、AMDが特定市場、特に中国圏での戦略的展開を重視している証左とも取れる。コストパフォーマンスを重視する同地域において、Navi 48ベースながらスペックを調整したGREバリエーションは、需要層との整合性が高い。加えて、中国語併記の製品パッケージが示すように、現地市場向け最適化の一環としてローカルパートナーとの連携が進んでいる可能性もある。

正式発表が後回しになる一方で、流通現場での実働が先行する現象は、サプライチェーン主導による市場投入の典型例といえる。これは、製品投入時期の柔軟性とリスク分散を両立させるアプローチとして、AMDの供給戦略における柔軟性を象徴しているともいえる。

Source:Tom’s Hardware