AMDが次世代グラフィックスカード「Radeon RX 9060 XT」を5月18日に発表する可能性が浮上している。台湾開催のComputex 2025においてゲーミング関連の基調講演を行うことを同社が正式に認めたことから、イベント直前の新製品投入と見られる。9060 XTはNavi 44 GPUに基づき、120ビットバス、最大3GHz超のクロック、32CU構成で500W級の電源が推奨されるとされており、ライバルであるNvidia RTX 5060 Tiとの市場競争が注目される。

また、9060 XTには16GBおよび8GBのメモリ構成が用意される見通しだが、後者に対してはパフォーマンス不足を懸念する声もある。AMDは5月21日の記者会見にてAIやGPUに関するさらなる革新を発表する予定であり、主流市場における同社の地位強化につながるかが問われる展開となる。

RX 9060 XTは主力GPU市場におけるAMDの新たな試金石となるか

AMDは5月18日にRadeon RX 9060 XTを投入する可能性が高まっており、これにより同社は再び主流価格帯GPU市場での競争力を試されることになる。搭載されると見られる「Navi 44」GPUは、32基のコンピュートユニット(CU)と最大3GHzを超える高クロックスピードを誇るとされており、120ビットバスで20Gbpsの高速メモリ帯域にも対応する。さらに、500Wクラスの電源ユニットが必要とされることから、高負荷ゲーム環境でも安定したパフォーマンスが想定されている。

この製品が対峙するのは、既に市場投入されたNvidia RTX 5060 Tiである。特に同GPUの16GBモデルは、前世代のRTX 4060 Tiを上回る性能を発揮し、AMDのRX 7700 XTとも拮抗している。そうした中で、9060 XTが同クラスの性能を保ちつつ、価格と電力効率で差別化できるかが焦点となる。

一方で、Computex 2025の開催直前に発売されるという時期設定は、AMDにとって大きな意味を持つ。同イベントではJack Huynh氏が登壇し、AIやグラフィックス分野における最新の取り組みを公表する予定であり、9060 XTの登場が戦略的な幕開けとなることが予測される。

メモリ構成を巡る選択と消費者の期待の齟齬

Radeon RX 9060 XTには16GBおよび8GBの2種類のメモリ構成が用意される可能性が報じられているが、8GBモデルに対しては早くも市場から疑念の声が上がっている。TechSpotの検証によれば、8GB版のRTX 5060 Tiは高解像度設定のゲームにおいて著しい性能低下を示しており、特に最新タイトルでは1080p環境ですら滑らかな動作が損なわれるケースが多発しているという。こうした事例を踏まえると、9060 XTの8GBモデルが現代のゲーム要求に応え得るのかは予断を許さない。

これに対し、16GBモデルは将来的なソフトウェア要件にも耐えうる柔軟性を備えており、より多くのユーザー層に受け入れられる可能性がある。問題は、この2モデル間の価格差と実際の性能体験に対する満足度である。AMDが価格競争力を武器にしてきた歴史を踏まえれば、16GB版の適正価格設定が製品の評価を大きく左右するであろう。

消費者の不満の根底には、2025年という時代においても依然として8GB構成が新製品として提供されるという認識への反発がある。AMDがこうした声をどう捉え、マーケティングに反映させるかが、今後の売上とブランド評価を左右する鍵を握る。

AMDはComputexで主導権を握れるか GPU戦略とイベント展開に注目

Computex 2025において、AMDが5月21日に実施するプレスカンファレンスは、同社の戦略を可視化する重要な場面となる。Computing & Graphics部門を率いるJack Huynh氏は「業界リーダーとともにAIの進歩を発表することに誇りを感じる」と述べており、GPUの枠を超えた広範な技術発表が示唆されている。今回の9060 XTを含む新製品群は、単なる性能競争の域にとどまらず、AI対応や消費電力最適化といった未来志向の課題への解答が期待される。

注目すべきは、同時期にリークされた「RX 9070 GRE」の存在である。これは標準のRX 9070よりも性能を約15%抑えた廉価モデルとして中国市場向けに2025年第4四半期に投入されるとの見通しがある。こうした製品ラインの分岐は、AMDが国・地域ごとの消費動向に応じた柔軟な供給戦略を進めていることを示している。

イベントの時期と発表内容、競合Nvidiaの動きとの対比を踏まえると、AMDにとってComputexは単なる展示会ではなく、自社の技術優位性とブランドポジションを再定義する場となる。9060 XTはその象徴的存在であり、その受容がイベント全体の評価に直結する可能性を孕んでいる。

Source:TechSpot