テスラ(NASDAQ: TSLA)の空売り比率が4月23日に49.13へと上昇し、過去2週間で最も高い水準を記録した。これは第1四半期決算発表後の株価反発や、イーロン・マスク氏の経営専念表明があったにもかかわらず、市場が依然として同社の先行きに慎重であることを浮き彫りにしている。
株価は24日に一時6.83%上昇したものの、年初来では36.39%の下落が続く。欧州での販売台数の減少、政治的反発、議会関係者による株式売却など複合的な要因が重なり、マスク氏の復帰のみでは構造的な課題の解消には至らないとの見方が根強い。
空売り比率49.13が示すセンチメントの悪化と決算発表後の株価動向

4月23日に記録されたテスラのショートボリューム比率49.13という水準は、同社株への市場心理が依然として弱気であることを如実に表している。この数値は、過去2週間で最も高く、売り圧力が高まっている状況を示唆するものとなった。一方で、2025年第1四半期の決算発表直後、株価は一時的に反発し、250.74ドルから256.87ドルへと6.83%上昇する動きを見せた。しかし、これまでの下落基調を覆すには至らず、年初来では36.39%ものマイナスを記録している。
このような値動きは、短期的な材料で一時的に買いが入ったとしても、長期的には投資家の懸念が根強く残っている証左といえる。とりわけ、売上や利益の成長鈍化、地域別の販売低迷が明らかになる中で、短期的な価格反発はむしろ空売り勢の利確や自律反発に過ぎないとの見方も根強い。決算内容が期待に届かなかった点と合わせて、現在のテスラ株には明確な成長ストーリーの再構築が求められている。
欧州市場での販売不振が映す構造的課題とブランド価値の揺らぎ
2025年第1四半期、テスラは欧州において54,020台の車両を販売したが、前年同期に比して日販ベースで約36%減少しており、地域市場での苦戦が鮮明になっている。具体的には、2024年同期における1日あたり945台から、今年は600台へと急減した。この落ち込みは一時的な需要変動というよりも、政治的逆風やブランドイメージの毀損といった外的要因が複雑に絡んでいる。
とりわけ、イーロン・マスク氏の政治的な発言や活動が、欧州の一部消費者層にマイナスの印象を与えており、それが販売減少に拍車をかけているとの見方もある。電動車市場での競争が激化する中、製品力だけでなくブランドの社会的イメージや企業倫理も購買判断の重要な要素となっている以上、テスラの経営戦略にはイメージ刷新と地域市場への対応強化が不可欠である。
機関投資家の動きとマスク氏の方針変更がもたらす市場の警戒感
報道によれば、複数の米国議員が決算発表直前にTSLA株を売却していた事実が確認されており、この動きが投資家に与える心理的影響は小さくない。さらに、マスク氏が政府効率省(DOGE)からの職務に区切りを付け、本業に回帰するという報道がなされたものの、これがテスラに対する投資家の信頼を本質的に回復させる決定打となるかは明確ではない。
Wedbush証券のダン・アイブス氏のように、マスク氏の経営専念をポジティブに評価する向きもある一方、企業の根本課題—販売不振、政治的リスク、成長の減速—が残存する以上、単一のトップの動向だけでは長期的な株価支援材料にはなり得ないとの警戒感が市場にはある。こうした背景から、現在の反発は依然として不安定な地盤の上に成り立っており、投資判断には慎重な姿勢が求められる。
Source:Finbold