CNBCの名物司会者ジム・クレイマーが、2025年の最重要投資先として「データセンター」を挙げ、AIインフラ需要を追い風とする成長性に言及した。エヌビディアへの強気姿勢で知られるクレイマーは、主要インデックスに表れない変化としてこの分野の実力を強調し、平均的な市場評価とは異なる見方を提示している。
彼の主張を裏付けるように、データセンター設備を手がけるVertiv社の株価が好決算を受けて急騰した。だが一方で、マイクロソフトによる一部プロジェクト縮小や、アリババ幹部による「バブル」懸念も浮上し、投資家の間では警戒感も広がっている。データセンターが本格的な成長軌道に入るのか、それとも過熱相場の終着点に近づきつつあるのか、判断は慎重を要する局面にある。
データセンター銘柄に再注目を促すジム・クレイマーの発言とVertiv株の急騰

2025年4月23日、ジム・クレイマーがX(旧Twitter)にて「データセンター株は過小評価されている」と発言した。彼はすでに終わった取引との市場認識を否定し、データセンターが今後の市場で最も重要なテーマであると強調した。
このコメントの直後、データセンターインフラ企業Vertiv(NYSE: VRT)が発表した好決算と前向きなガイダンスにより、同社株は市場前取引で18%以上上昇。終値でも8.64%高の78ドルに達し、投資家の評価が一気に上向いた形である。
クレイマーは今年2月にも同様の主張を行っており、AI関連の設備投資が加速するなかでデータセンターの長期的需要は確実に増加すると述べていた。こうした背景には、生成AIの商用展開やクラウド基盤の拡充といった実需が存在しており、単なる思惑ではない実体経済の動きが影響している。ただし、短期的には一部のデータセンター関連銘柄が過熱感を帯びているのも事実であり、Vertiv株の急騰が「期待先行」かどうかは冷静な分析が求められる。
クレイマーの推奨によって注目を集めたデータセンター分野だが、今回のVertiv株の反応は、少なくとも機関投資家の一部がその評価を見直し始めている兆候とも解釈できる。市場は新たな成長領域を模索する中で、改めてインフラの中核を担うセクターに目を向けている。
データセンター投資の加熱とバブル警戒論の台頭
データセンター分野をめぐっては、投資機会としての注目と同時に、過熱を懸念する声も強まっている。アリババ(NYSE: BABA)の幹部ジョー・ツァイ氏は、AI需要に乗じた設備投資の急増がドットコム・バブル時代の過ちを再現しかねないと警鐘を鳴らす。さらに、マイクロソフト(NASDAQ: MSFT)も一部のデータセンタープロジェクトの見直しを行っており、拡大一辺倒の流れが変化を見せつつある。
このような懸念は、AIブームがもたらす巨額の設備投資と、それに追随する企業群の成長戦略の危うさを浮き彫りにする。多くの企業がインフラ確保を急ぐ中で、需給の不均衡や収益性の低下が懸念され始めており、結果的に市場全体に悪影響を及ぼす可能性がある。クレイマーのように将来性に期待する立場と、バブル崩壊を警戒する立場の分断は、今後のセクター評価において避けて通れない構図である。
一方で、この分野は依然として生成AIやクラウドサービス、IoTの基盤を担う存在であることは揺るがない。市場が冷静さを保ちつつ需給バランスと投資回収可能性を評価することで、持続的成長につながる可能性もある。そのため、短期的な値動きではなく、ファンダメンタルズと事業の実態に基づく精緻な分析が求められている。
Source:Finbold