Nvidiaが新たに発表した企業向けAIソフトウェア「NeMo」は、自律型AIエージェントの構築を可能にするマイクロサービス群であり、同社にとって推定1兆ドル規模の新市場を切り開く鍵とされている。ハードウェア依存を超えたこの展開により、貿易摩擦などの地政学リスクを回避しつつ、ソフトウェア分野での収益多様化が進む可能性が高い。
現状、Nvidia株は年初来高値から約30%下落しているものの、Piper SandlerやIntelligent Alphaなどの有力筋は依然として「強い買い」を推奨し、目標株価は最大168ドルと現水準からの大幅な上昇余地を示している。将来予想PERも24倍と過去水準を下回っており、2025年以降を見据えた中長期投資先としての魅力が再評価されつつある。
NeMoが切り拓く自律型AIエージェント市場の可能性とNvidiaの戦略的転換

Nvidiaが発表した新ソフトウェア「NeMo」は、企業が独自の自律型AIエージェントを構築可能にするマイクロサービス基盤であり、同社の事業ポートフォリオにおいて重要な転換点を示す。これによりNvidiaは、従来の半導体主導の収益構造から、ソフトウェアを中核とした持続的な成長戦略へと舵を切ることになる。ウォール・ストリート・ジャーナルが指摘する通り、企業向けソフトウェア全般の再定義にもつながるこの領域は、将来的に1兆ドル規模に達するとの見方が浮上しており、NeMoの登場はその最前線を担う契機となる。
注目すべきは、このNeMoがハードウェアの供給制限や地政学的摩擦といったリスクを回避できる性質を持つ点である。特に米中間の貿易摩擦によりNvidiaが2024年第1四半期に約55億ドルの損失を見込んでいる中、NeMoのような非物理的プロダクトは収益安定性の補完となる。一方で、この急進的な展開が短期的にどれほど市場浸透するかについては慎重な見極めが必要であり、NeMoの価値は導入事例やエンタープライズへの展開速度によって左右されるだろう。
株価下落と割安評価の同居 市場はNvidiaに何を見ているのか
現在のNvidia株は年初来高値から約30%下落しているが、それに対してPiper Sandlerが提示する目標株価は150ドル、Intelligent AlphaのCEOダグ・クリントンが評価する予想PERは24倍で、過去5年間の平均を下回っている。この数値の乖離は、投資家が短期的懸念と長期的潜在力の狭間で揺れている状況を物語る。
特に2025年の景気後退が警戒される中で、クリントン氏が「たとえ景気が悪化してもハイパースケーラーによるAI支出は維持される」と述べていることは、AI需要の持続性に対する一つの論拠として注目される。
株価の下落が示すように、足元では利益確定売りや地政学的リスクへの警戒感が先行している可能性が高い。しかし、NeMoの導入が順調に進行し、Nvidiaが単なるGPUメーカーからAIプラットフォーム企業へと進化するならば、現在のバリュエーションは過小評価であるともいえる。今後、投資家は業績数値だけでなく、NeMo関連の売上比率や契約実績など非財務指標にも注視することが求められる。
Source:Barchart.com