TSMCは北米テクノロジーシンポジウムにて、1.4nm世代の「A14」プロセスを正式発表し、2028年の量産開始を目指す計画を明かした。2nm世代を上回る性能と電力効率に加え、開発進捗も順調であることが強調された。

一方、Samsung Foundryは従来1.4nmの早期実現を掲げていたが、近年は2nmや3nmプロセスの改善に注力しており、最先端ノードへの投資判断を見直している様子がうかがえる。

TSMCが提示したA14プロセスの性能と進捗状況

TSMCが北米テクノロジーシンポジウムで発表した1.4nm「A14」プロセスは、従来の2nmノードを上回る性能と効率を持つ次世代半導体技術として注目を集めている。同社はこのプロセスにおいて、同一の電力条件下で最大15%の性能向上、あるいは同一性能で最大30%の消費電力削減が可能であるとしており、加えて論理密度は2nmプロセス比で20%向上するとしている。こうした性能の向上により、より高効率かつ高性能なチップ設計が現実味を帯びてきた。

さらに注目すべきは開発スピードである。TSMCはA14プロセスにおける歩留まりの進捗が予定より早く、安定した製造環境の確立に近づいていることも明らかにしている。現在、A14の量産開始は2028年とされているが、この歩留まり状況次第では予定より早まる可能性も示唆されている。

現時点で同プロセスの顧客候補としてAppleやAMD、Intelなどが挙げられ、量産体制の安定性と性能実績が今後の採用動向に大きく影響することになる。これにより、TSMCの次世代製品への注文集中が加速する構図も十分に考えられる。

サムスンの1.4nm計画の遅延と注力ポイントの変化

Samsung Foundryはかねてより2027年までに1.4nmプロセスを実現する方針を掲げてきたが、現在はその計画の実行を一時保留し、既存の3nmおよび2nmプロセスの改善に注力していると報じられている。特に、3nm GAA(Gate-All-Around)技術の歩留まりや性能面に課題があるとされ、これが技術開発の優先順位を見直す要因となった可能性がある。

この戦略変更により、サムスンは次世代ノードへの移行よりも、現行ノードの安定化と顧客信頼の回復を重視している様子がうかがえる。現時点での報道では、同社の2nmプロセスは歩留まり30%に達したとされるが、TSMCの2nmがテスト段階で60%を達成しているという情報と比較すると、依然として差がある状況である。

サムスンの3nm GAAは市場での採用実績に乏しく、主要なファブレス企業からの受注確保に苦戦しているという現状もある。こうした背景から、先進プロセス開発の優先順位が後退していることは、結果的に1.4nm世代におけるTSMCとのギャップ拡大につながる可能性を含んでいる。

TSMCとSamsungの技術格差が再び市場に影響を及ぼす可能性

TSMCがA14プロセスの順調な進捗を明かした一方で、Samsungが同プロセスの開発優先度を下げていることにより、両社の間には再び明確な技術的隔たりが生じつつある。2024年末の時点でTSMCのファウンドリー市場シェアは67.1%に達しており、サムスンに対して圧倒的なリードを維持している。こうした流れのなかで、次世代プロセスの開発速度が新たな分水嶺となる構図が見え始めている。

仮にTSMCが1.4nmの量産を予定通り、あるいは前倒しで実現できれば、AppleやAMDなどの大口顧客が再びTSMCに集中する展開も考えられる。これは、価格や製造能力だけでなく、先端ノードへの信頼度が顧客選定に大きな影響を与えていることを意味する。

一方、サムスンが後れを取った状態で1.4nm世代を迎えた場合、今後数年のファウンドリー競争におけるポジションに深刻な影響が及ぶ可能性もある。市場全体が高密度・低消費電力な設計を重視するなかで、各社の対応スピードが競争の明暗を分ける鍵となっていく。

Source:SamMobile