ディズニー(DIS)株は2024年4月時点で年初来19.4%の下落を記録し、ダウ銘柄中でも下位に低迷しているが、ストリーミング部門の収益改善やボブ・アイガーCEOによる経営再建が着実に進展している。2025年度第1四半期の調整後EPSは前年同期比で78%増の1.76ドルと大幅に改善しており、企業体質の底上げが進んでいる点が注目される。
一方で、ディズニー株の不振には、トランプ前大統領の強硬な対中政策が及ぼすリスクや、消費低迷によるテーマパーク事業への影響といったマクロ経済的な不安も背景にある。しかし最近になって、トランプ氏の対中レトリックが和らぎ、米中関係の改善期待が浮上するなか、ディズニーにとっての逆風も緩和の兆しを見せている。
依然として不透明感は残るものの、株価収益率(P/E)15.4倍という割安なバリュエーションと、ウォール街アナリスト29人中21人が「強い買い」と評価する投資家心理の改善が相まって、現時点でのディズニー株は再評価の余地を持つ局面にあるといえる。
業績回復の兆しと評価の乖離が示す割安感

2025年度第1四半期におけるディズニーの調整後EPSは1.76ドルと、前年同期の0.99ドルから78%増加し、経営回復の確かな兆しを示した。ボブ・アイガーCEOの復帰以降、特にストリーミング事業の黒字化が顕著で、構造的な立て直しが進んでいる。にもかかわらず、2024年4月時点で同社株は年初来19.4%下落しており、ダウ平均構成銘柄の中でも下位に低迷しているのが現状である。
株価と業績の間にあるこの乖離は、投資家が抱えるマクロ経済不安や地政学的リスクへの過敏な反応が影響しているとみられる。特に、ディズニー株は現在P/E15.4倍というS&P500の平均を下回る水準にあり、業績面での回復を考慮すれば割安感が際立つ。ウォール街のアナリスト29人中21人が「強い買い」としている点も、市場評価の修正余地を示唆する。
足元の業績改善が継続する限り、ディズニー株には中長期的な反転の可能性がある。ただし、市場が同社の再評価に至るまでには、外部環境の不確実性がある程度解消される必要がある。現時点での低P/E水準は、慎重な投資家にとっては着実な積み増しの好機と捉えることができる局面にある。
貿易戦争の余波と観光需要の停滞がもたらす逆風
ディズニーの事業構造において、中国は映画・テーマパークの両面で重要な収益源である。上海および香港に展開するテーマパークは現時点で目立った打撃を受けていないが、米中貿易摩擦の再燃により、今後の経済制裁や関税の影響が無視できない。米企業への報復措置としてハリウッド映画の規制が強まれば、ディズニーの国際配信戦略に影響を及ぼす可能性がある。
加えて、国内経済においてもディズニーにとって不利な指標が相次いでいる。Bankrateの調査によれば、2025年の夏季休暇を計画している米国人は減少しており、国内旅行支出の縮小が予測される。消費者心理はすでに冷え込み、特に娯楽や観光といった裁量支出の抑制がパーク事業の収益性を直撃しかねない。
観光セクターは経済の体感温度を直接反映するため、外部要因に極めて脆弱である。国際観光客数の二桁減少というデータも、ディズニーパークにとっては深刻な懸念材料である。平均滞在日数と支出額が高い外国人旅行者の減少は、単なる客数減以上に利益への影響が大きい。今後の政策次第ではあるが、事業成長の足かせとなるリスクが継続していることは否定できない。
Source:Barchart.com