ウォーレン・バフェットが掲げる「他人が恐れている時こそ貪欲に」という投資哲学が、現在の市場で現実味を帯びてきた。トランプ前大統領の強硬な関税政策が再燃し、米ナスダックや豪ASXも急落。こうした混乱のなかで、バークシャー・ハサウェイは現金比率を過去最高にまで高めていた。

一部の優良企業の株価まで割安に放置されている今、バフェットの動向は慎重な長期投資家にとって注目すべき指針となる。感情に振り回されず、本質的価値に立脚した投資判断が問われている。市場の恐怖は時に好機を生む。今こそ冷静な目で、次なる富の源泉を見極める局面に差しかかっているのかもしれない。

バフェットの現金戦略と市場急落の符合

2025年、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが積極的にキャッシュポジションを高めていた背景には、株式市場への慎重な見通しがあった。米中間の貿易摩擦が再燃し、トランプ前大統領の強硬な関税政策が世界市場に再び不安定要因として作用。米ナスダックはベアマーケット入りし、オーストラリアのASX200指数も年初来の高値から大幅に下落した。こうした状況は、バフェットが長年説いてきた「他人が恐れている時に貪欲であれ」という言葉の再評価を促している。

一連の市場変動は、一部の銘柄だけでなく、企業業績とは無関係な要因によって健全な企業の株価まで押し下げる「センチメント主導の売却」を引き起こしている。バフェットのように長期視点で市場を見渡す者にとっては、この局面こそが資本投入の好機となる。彼が短期的なタイミングを測ることを否定しながらも、恐怖が市場を支配する局面で買い向かう姿勢を見せてきた事実が、今回もまた裏付けられる形となった。

豪州株式市場の調整と銘柄別チャンス

Bell Potter証券は、現在の市場の不安定さを「トランプ政権初期の経済環境と酷似している」と評し、当時と同様に不透明感と政策ショックによる過剰反応が生じていると分析している。ASX市場でも、バイオ医薬品の大手CSLや、投資銀行のMacquarie Group、医療画像分野で急成長するPro Medicus、家具ECのTemple & Websterなど、業績好調な企業の株価が相次いで調整局面に入っている。

こうした銘柄群は、いずれも市場心理によって売り込まれており、実態とは乖離した水準にある可能性がある。長期的に堅牢なビジネスモデルを持つ企業の一時的な下落は、むしろ割安なエントリーポイントとなり得る。価格調整は必ずしも企業価値の棄損を意味しない。むしろ、市場が恐怖に支配されるタイミングでこそ、真の投資家としての胆力が試される局面に他ならない。バフェットの投資哲学が、ここでも現実的な指針として機能している。

Source:msn