Appleは、昨年7月に初公開したSafariの広告「Flock」を再放送し、iPhoneユーザーに対しChromeブラウザ使用のリスクを警告した。背景にはGoogleがモバイル版Chromeでサードパーティークッキーの廃止を撤回したことがあり、個人データ漏洩への懸念が高まっている。
広告では、監視社会を象徴する「カメラ鳥」の存在が描かれ、Safariへの切り替えがセキュリティ確保の鍵であることを印象付けた。AppleはGoogleやChromeの名を出さずに批判を展開し、シークレットモード使用も一つの対策として示唆している。
Appleが再放送したSafari広告に込めたChromeへの暗黙の警告

Appleは昨年7月に初公開したSafariの広告「Flock」を、約10か月ぶりに再放送した。この広告は、Androidユーザーを監視する「カメラ鳥」の存在を通じ、モバイルブラウザのプライバシー保護の重要性を訴えている。特に、Safariが他のブラウザに比べて個人データを厳格に守ることを印象付ける演出が施され、ユーザーに対して閲覧行動の監視リスクを警戒させる構成となっている。
再放送の背景には、GoogleがChromeブラウザにおけるサードパーティークッキーの廃止を撤回したことがある。この動きにより、金融関連アプリの資格情報などセンシティブなデータが追跡・漏洩するリスクが再浮上した。Appleは広告内でGoogleやChromeの名称こそ出していないが、iPhoneユーザーに対しChromeの使用継続に対する慎重な判断を促す狙いが明らかである。
また、広告タイトル「Flock」は、単に「鳥の群れ」を指すだけでなく、Googleがかつて提唱していたトラッキング代替技術「FLoC(Federated Learning of Cohorts)」への皮肉も込められている。このようにAppleは、直接的な批判を避けつつも、巧妙に自社ブラウザへの信頼を高める戦略を採用している。
Googleのクッキー政策撤回が引き起こしたプライバシー懸念の再燃
Googleはかつて、Chromeにおいてサードパーティークッキーを廃止し、代替技術への移行を進めると表明していた。しかし、広告業界からの競争制限懸念を受け、2025年4月に方針を撤回したと発表した。この結果、Chromeユーザーの個人情報保護に対する期待は後退し、依然として閲覧データが追跡されるリスクが残る状況となっている。
特にモバイル環境では、ユーザーが金融情報や個人認証情報に頻繁にアクセスするため、サードパーティークッキーの存在は重大なセキュリティリスクとなる。AppleがSafari広告を再放送したタイミングは、この脆弱性に対する警鐘の意味合いが強いと考えられる。
Googleがプライバシー保護への取り組みを明確に打ち出せなかったことは、競合ブラウザとの差別化を図るAppleにとって追い風となった。ただし、iPhoneユーザーの間でChromeブラウザを即座に削除する動きが広がるとは限らず、現実的にはシークレットモードの活用といった個別対策が中心となるとみられる。
Source:PhoneArena