テスラ(TSLA)は過去最高値から約50%下落し、時価総額8,340億ドルにとどまる中、Wedbush証券のダン・アイヴス氏が「コードレッド」の警告を発した。アイヴス氏はイーロン・マスク氏の政治関与がブランド毀損と15~20%の恒久的需要減少を招いたと指摘し、経営専念を促している。

第1四半期決算も市場予想を下回り、売上高は前年比9%減、純利益は71%減となり、営業利益率はわずか2.1%まで低下した。空売り勢は2025年に115億ドルの利益を計上し、テスラ株の先行き懸念が強まる中、自動運転事業への投資やエネルギー部門の拡大が支えとなるか注目される。


テスラに迫る「コードレッド」警告とブランド毀損の深刻な影響

Wedbush証券のダン・アイヴス氏は、テスラ(TSLA)が「コードレッド」状態に陥っていると指摘し、CEOイーロン・マスク氏の政治関与がブランドに深刻な悪影響を及ぼしていると警鐘を鳴らした。マスク氏がドナルド・トランプ前大統領との関係を強めたことにより、テスラは世界的な政治シンボルとなり、結果として株価下落、抗議活動、15~20%に及ぶ恒久的な需要減少が引き起こされたとされる。

アイヴス氏は、テスラの長期的な成長力にはなお期待を寄せる一方、マスク氏が政治的活動を控え、企業経営に専念しなければ、ブランド価値の回復は困難になるとの見解を示している。この分析は、短期的な業績動向以上に、企業イメージの毀損リスクが中長期の事業戦略に重大な影響を及ぼす可能性を示唆している。

ブランド毀損の問題は、販売面だけでなく、企業全体の人材確保やパートナーシップにも波及する恐れがあると考えられる。特にエネルギー事業や自動運転開発など、多様な市場展開を図るテスラにとって、顧客や規制当局からの信頼低下は致命的な障害となり得る。企業リーダーの言動がビジネス基盤を揺るがす現状において、マスク氏個人とテスラという企業体の分離が不十分なことが、今後さらに市場の懸念を呼び起こす懸念も払拭できない。

第1四半期決算に見る業績悪化と空売り勢の攻勢

テスラは2025年第1四半期決算で市場予想を大きく下回り、売上高は193億4,000万ドルと前年同期比9%減少し、純利益は71%減の4億900万ドルに落ち込んだ。自動車部門の売上は174億ドルから140億ドルへと減少し、刷新版モデルYの生産調整や販売奨励金増加が収益悪化の一因とされた。営業利益率も2.1%に縮小し、人工知能関連プロジェクトへの投資負担が重しとなったことが明らかとなった。こうした業績低迷を受け、テスラ株の年初来下落率は30%に達し、ハイテク大手の中でも最大級の下げ幅となった。

この状況下、テスラ株に対する空売りは急増し、S3パートナーズのデータによれば、空売り勢は2025年に115億ドルもの利益を確保している。テスラは空売り額でNVIDIA(246億ドル)、Apple(222億ドル)に次ぐ176億ドルに達し、市場の悲観的な見方を浮き彫りにしている。

納車台数の13%減、中国市場での競争激化、ロボタクシー開発の遅れなど、事業環境の悪化が一層不安材料となっており、短期的な反発には厳しい環境が続く可能性がある。業績不振と空売り圧力の連鎖が、株主心理に与える影響は今後も無視できないだろう。

エネルギー事業の成長と自動運転への期待が支えとなるか

テスラは四半期決算において苦戦を強いられた一方で、エネルギー生成および蓄電事業では67%増の27億3,000万ドルという力強い成長を記録した。この背景には、AIインフラ需要の拡大による電力供給ソリューションの需要増加があり、従来の自動車事業とは異なる収益源として重要性を高めつつある。

また、同社は2025年6月までにテキサス州オースティンで無人ライドシェアサービスを開始する計画を掲げ、自動運転事業への積極投資を続けている。自動運転の分野で競合に対して後れを取る現状を挽回できるかが、今後の成長ドライバーとして注目される。

ただし、エネルギー事業と自動運転プロジェクトが本格的な収益源となるまでには依然として時間がかかる見通しであり、短期的な収益改善には直結しない可能性が高い。とりわけ、AI関連技術への開発投資が高コスト化している現状では、財務的な負担も無視できない。テスラにとっては、従来型自動車市場の低迷リスクを緩和しつつ、次世代事業の商業化を加速させるという二正面作戦が求められる局面にある。


Source:Barchart.com