2025年、Amazonは年初来20%以上の株価下落に直面する一方で、Costcoは約7%の上昇を記録し市場の混乱を回避している。ウェルズ・ファーゴは、Amazonが一部データセンターリースを停止したと報告し、経営判断に変化が見られる。Costcoは関税リスクを一定程度受けつつも、経済低迷下での回復力と会員制モデルの堅牢さにより「安全資産」として評価されている。
しかし、長期的視点ではAmazonの成長力が際立つ。売上高、利益成長率、AIや衛星通信など多角的な事業展開が、コストコを上回る成長可能性を示唆する。さらに、AmazonのフォワードPERは26.2倍と、Costcoの54.4倍に比べ割安感が出てきた点も見逃せない。短期の安定を取るか、長期の飛躍を狙うか、投資家にとって今が重要な分岐点となる。
コストコの堅調な株価推移と経済逆風への耐性

2025年、コストコ・ホールセールは市場全体の不安定な動きにもかかわらず、年初来約7%の株価上昇を維持している。同社のCEOであるロン・ヴァクリスは、関税の影響について、米国売上高の約3分の1が海外からの輸入品であると明かしたものの、そのうち半分未満が中国、カナダ、メキシコに依存していると説明した。トランプ政権下でこれらの国々への関税が高まるなか、コストコはサプライチェーンの多様化によりリスクを抑制している。
さらにヴァクリスは、経済不安定期には「質の高い商品を素晴らしい価格で提供する」というコストコの価値訴求が一層際立つと強調している。実際、経済低迷局面においてもコストコは安定した顧客基盤と堅調な売上成長を維持してきた実績がある。これにより、投資家の間ではコストコ株が「安全な避難先」として認識され、株価の堅調さに直結している。
一方で、関税リスクを完全に無視することはできない。特に長期的な影響として、仕入コストの上昇や価格転嫁の難航が収益性を圧迫する可能性も考慮すべきである。コストコのビジネスモデルが価格競争力に依存している以上、マクロ経済環境の変化には引き続き警戒が必要である。現時点では安定性が目立つものの、中長期ではこの堅調さを当然視すべきではないだろう。
Amazonの成長ドライバーとコストコとの決定的な違い
Amazonは2025年、年初来で20%以上の株価下落に直面したものの、長期成長に関しては引き続き高い潜在力を保持している。最新四半期における売上高は前年比10%増加し、利益も前年同期比でほぼ2倍の20億ドルに達した。一方、コストコの売上高は9.1%増にとどまり、純利益も2.6%増にとどまっている。
さらに、ウォール街はAmazonの来期利益成長率を19.6%と予測しており、コストコの10.7%を大きく上回る。加えて、AI事業の拡大、医療分野への進出、自動運転車開発企業Zooxの保有、さらには衛星インターネット事業「プロジェクト・カイパー」の推進など、多岐にわたる成長エンジンを備えている点が際立つ。
このような多角的成長戦略により、Amazonは単なるeコマース企業を超えた「未来型複合企業」への進化を志向している。ただし、各事業の収益化には時間と追加投資が不可避であり、短期的な財務負担がリスク要因となる。現在の株価水準が割安に映る局面ではあるものの、成長期待の裏には不確実性も孕んでいるため、投資判断には慎重な分析が求められる。Amazonの潜在力は大きいが、それを現実の成果に結び付けられるかが今後の最大の焦点となる。
AmazonとCostcoにおけるバリュエーション比較の意外な結論
現在、AmazonのフォワードPERは26.2倍で推移しており、これまで「割高株」と見なされがちだった同社にしては控えめな水準となっている。対照的に、コストコのフォワードPERは54.4倍と、Amazonの倍以上に達している。
この数値の違いは、両社の成長期待と市場からの評価のズレを如実に示している。特に、Amazonが今後の利益拡大を着実に続けると仮定すれば、現時点の株価水準は歴史的に見ても投資妙味がある局面と解釈できる。一方で、コストコの高いPERは、堅実なビジネスモデルへの過剰な安全志向を映し出している可能性がある。
もっとも、PERだけで単純比較するのは危険である。Costcoのモデルは景気後退期に強さを発揮するが、大規模な成長加速は見込みにくい。一方、Amazonは成長機会が広範に存在するが、それに伴うリスクも内包する。バリュエーションの数字だけを見て優劣を論じるのではなく、リスク許容度や投資期間を踏まえた総合的な判断が不可欠である。現時点では、長期的な成長を重視するのであれば、Amazonの方に分がある可能性が高い。
Source:The Motley Fool