株式と債券の伝統的な資産配分が見直される中、上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドシェアーズ(GLD)が注目を集めている。GLDは2000年以降610%上昇し、S&P500指数を大幅に上回る成績を記録した。この背景には、アメリカ財政の悪化、中央銀行による金の大量購入、そして国債市場における構造的変化がある。

近年、米国債の信用力に対する懸念が高まり、外国政府系機関の米国債保有は減少傾向にある一方、金への分散投資が加速している。専門家は金の役割をインフレヘッジおよび経済ストレス時の安全資産と位置づけ、ポートフォリオの一部に組み入れる重要性を指摘している。

SPDRゴールドシェアーズの急騰と米国債市場の構造変化

SPDRゴールドシェアーズ(GLD)は2000年以降で610%もの上昇を遂げ、S&P500指数を大きく上回る成果を示した。背景には、アメリカ財政の悪化と国債市場の根本的変化がある。米国は21世紀に入り、テロ、金融危機、パンデミックなどを経て債務を膨張させ、2024年度には1.8兆ドルの財政赤字を計上し、総債務残高は36兆ドル超に達した。これにより、債券市場では米国債の信用力への懸念が強まり、S&Pやフィッチが格下げを行う事態となった。

この環境下で、中央銀行は米国債よりも金への投資を加速させ、2024年には過去最高の1兆ドル超の金を購入した。米連邦準備制度理事会(FRB)も量的引き締め(QT)により国債市場への資金供給を減少させている。結果として、国債市場における外国政府系機関の保有率が低下し、民間部門がその役割を担う構図へと変化した。これら一連の事実は、GLDが歴史的な上昇を遂げた要因を端的に物語っている。

金市場における中央銀行の役割とインフレヘッジ需要の高まり

中央銀行による金の純購入は、2024年まで15年連続で続き、昨年だけで1兆ドルを超える規模に達した。この潮流は、各国が準備資産の分散を進める中で、金が再評価されている現実を示している。アメリカ財政の先行き不透明感やインフレ懸念が強まる中、金は伝統的なインフレヘッジ手段としての地位を取り戻している。

ポール・チューダー・ジョーンズは「すべての道はインフレに通じる」と述べ、金の重要性を改めて強調した。株式市場の長期的優位性が依然存在する一方、経済のストレス局面では金の堅調なパフォーマンスが確認されている。特に、長期国債の利回り上昇とそれに伴う国債市場の動揺は、今後も金の需要を底上げする可能性がある。

GLDへの投資判断と分散ポートフォリオの意義

SPDRゴールドシェアーズ(GLD)は過去の実績からみて圧倒的なリターンを記録してきたが、今後の投資判断は慎重を要する。モトリーフールの「Stock Advisor」アナリストチームが選定した「今買うべき10銘柄」にはGLDが含まれておらず、より高い成長ポテンシャルを持つ銘柄が存在する可能性が示唆されている。

それでもなお、経済不安時におけるリスクヘッジの観点から、金への適度な分散投資は合理的と考えられる。過去のデータからも、ダウ平均が長期的に金を上回ったとはいえ、局所的なストレス局面では金が資産防衛の役割を果たしてきた事実がある。GLDは、完全なリターン追求ではなく、資産防御の一環として慎重に位置づけるべきであろう。

Source:The Motley Fool