Nvidia(ティッカー:NVDA)は、2025年に入り株価が30%以上下落し、時価総額で1兆ドル超を失った。データセンター需要によるAI分野の成長が続く一方で、米中貿易戦争の影響により、売上の最大30%がリスクに晒される可能性が指摘されている。
特にH20チップの輸出規制が強化され、同社は最大55億ドルの減損を計上する見通しとなった。実質的な中国依存度は30%に達するとされ、Huaweiなど現地競合の台頭も加速している。これらの動向は、長期的にNvidiaの成長軌道に重大な影響を及ぼす恐れがある。
Nvidia、中国依存度の実態と収益リスク

Nvidiaは最新の財務開示において、売上の14%が中国市場に由来することを明らかにしたが、シンガポール経由の販売を含めると実質的な中国依存度は最大30%に達する可能性が指摘されている。同社はH20チップの輸出規制に伴い、最大55億ドルの減損計上を警告しており、これによりAIチップ販売の柱を喪失するリスクが現実味を帯びつつある。
2025年初頭には、中国企業からのH20チップの注文額が160億ドル超に達していたとされるが、これらの売上が一挙に失われる事態は、Nvidiaの短期的収益に重大な打撃を与える。特に、現在の株価が過去12か月売上高の18.4倍、予想売上高の11.7倍に低下している状況を踏まえると、中国市場からの収益剥落がさらに株価を押し下げる懸念は払拭できない。
Nvidiaは長年にわたり、中国市場におけるAI分野での地位を築いてきたが、今回の規制強化により、その優位性が大きく揺らぐ局面を迎えている。シンガポール経由の取引が実態以上に分散されていた実例からも、同社のグローバル売上構成への再評価が市場で進む可能性が高まるだろう。
中国競合の台頭とNvidiaの中長期リスク
中国ではHuaweiなどの現地企業が巨額の投資を行い、自国市場におけるAIチップ供給の自立を急速に進めている。加えて、中国政府は外国製半導体への依存低減を国家戦略として強化しており、この政策転換がNvidiaに対して新たな逆風を生み出している。
特にHuaweiは、AIチップ分野において国家支援を背景に技術開発を加速させ、Nvidiaの不在を補完する市場体制を整えつつある。この動きにより、仮に将来的に規制が緩和されたとしても、Nvidiaがかつての市場シェアを回復することは困難になる可能性が高い。規制による一時的な影響ではなく、競争構造そのものが変質しつつある現実が重くのしかかる。
今後、世界第2位のAI GPU消費国である中国市場の喪失は、Nvidiaの成長シナリオにおいて長期的な痛手となり得る。投資家は単なる一時的な収益減少以上に、グローバル市場における競争力そのものの低下リスクを織り込む必要があると考える。
Source:The Motley Fool