2025年に再び大統領就任を果たしたドナルド・トランプは、ヘリテージ財団が策定した「プロジェクト2025」の指針に沿って急速に施策を推し進めている。移民政策の強化、ディープステート再編、行政権限の拡大といった各分野でその影響が顕著であり、規制緩和や石炭産業復活といった経済政策も計画通り進行している。
FEMA機能縮小や教育省改革も加速しており、政権は連邦政府の構造そのものに大きな変革をもたらしつつある。これらの動きは、司法省の政治化や文化戦争の激化といった懸念材料とともに、今後の政治的バランスを揺るがす可能性が高まっている。
移民政策とディープステート再編に見るプロジェクト2025の実行状況

トランプ大統領は、2025年1月の再任以降、移民政策の強化に本格的に着手した。ICEによる強制送還件数は急増し、学校や職場、自宅からの拘束も頻発している。プロジェクト2025が示した国外追放の方針に沿った措置であり、過去4年間のバイデン政権下での対応とは明らかに一線を画す。
また、ディープステートの再編では、政権に忠誠を誓う連邦職員の大量解雇が進み、イーロン・マスクの「DOGE」プラットフォームを利用して12万人以上の職員が排除された。国防総省の組織改革も進行し、軍の指揮系統にまで忠誠心重視の人事が浸透している。
これらの動きは、プロジェクト2025の基本設計に忠実である一方、連邦政府の中立性や行政機構の安定性を損なう懸念も浮上している。特に移民政策の過剰な強硬策は社会分断を助長する可能性があり、連邦機関の政治的忠誠化は長期的な行政運営への影響が避けられない。現段階では初期目標に沿った成果が可視化されているが、その反動リスクも無視できない。
行政権拡大と文化戦争への対応に見るトランプ政権の転換
行政権限の集中化は、プロジェクト2025が推奨する「単一行政理論」に基づくものであり、トランプ大統領はこれを現実に移しつつある。行政機関に対する議会や司法のチェック機能は限定的にしか機能しておらず、規制緩和といった施策も大統領令を通じて迅速に実行されている。
さらに、文化政策分野では、多様性・公平性・包摂性(DEI)推進策の撤廃が進み、企業や教育機関の対応にも大きな変化が生じている。ターゲット社を含む企業群が影響を受け、企業文化全体に波紋を広げた。
行政権拡大は、政権運営の効率化を目的とする一方で、権力の集中による独善的統治への懸念を生じさせる。また、文化戦争における急進的な介入は、社会的緊張を高める要因となり、経済活動にも影響を及ぼす可能性が高い。プロジェクト2025の理念に忠実なこれらの改革は、短期的な統治効率向上をもたらす反面、中長期的な政治的・社会的コストが無視できない局面を迎えている。
経済政策と連邦機関再編がもたらす連邦政府の変容
トランプ政権は、プロジェクト2025に基づき、規制緩和を中心とする経済政策を積極的に推進している。特に石炭産業の復活が顕著であり、エネルギー分野におけるクリーンエネルギー推進の動きを逆行させる形となった。また、連邦緊急事態管理庁(FEMA)では機能縮小が進み、ハリケーン・ヘレーネ後の支援対応に遅れが見られた。加えて、教育省の権限縮小や社会福祉プログラムの削減提案も相次ぎ、連邦機関の役割そのものが大きく再定義されつつある。
これらの政策展開は、プロジェクト2025の意図を体現するものであり、連邦政府の規模と機能を大幅に縮小する動きに直結している。しかし、災害対応能力の低下や社会的セーフティネットの縮小は、短期的な財政支出削減効果を上回る負の社会影響を引き起こす可能性を孕む。経済自由化と行政コスト削減の成果を追求する一方で、国民生活への長期的な悪影響を慎重に見極める必要がある局面となっている。
Source:24/7 Wall St.