イーライリリー(NYSE:LLY)は、時価総額8,150億ドルに達し、ヘルスケア分野初の1兆ドル企業となる見込みである。GLP-1経口薬オルフォグリプロンの好調なフェーズ3試験結果を背景に、バンク・オブ・アメリカは年間売上高100億ドルを予測し、2025年には売上高580億〜610億ドルに達する可能性がある。

加えて、アルツハイマー治療薬キスンラやがん領域への進出によりパイプラインも拡充され、2030年までに年平均15%の売上成長率が予想される。競争激化や関税リスクを抱えつつも、アメリカ国内での大規模製造拠点整備によりリスク分散を図っており、1兆ドル到達は現実味を帯びてきた。

イーライリリーを1兆ドル企業へと押し上げる成長戦略の全貌

イーライリリー(NYSE:LLY)は、GLP-1減量および糖尿病市場において支配的な地位を確立し、次なる時価総額1兆ドル企業を目指している。オルフォグリプロンはフェーズ3試験でノボノルディスク(NYSE:NVO)のオゼンピックに匹敵する成果を示し、針を使わない経口薬として利便性を高めた。

バンク・オブ・アメリカは同薬の年間売上高を100億ドルと予測しており、リリー全体では2025年に580億〜610億ドルの売上達成が見込まれている。加えて、既存製品のマウンジャロやゼップバウンドも強力な成長エンジンとして機能しており、GLP-1市場の拡大とともにリリーの売上規模を一段と押し上げている。

さらに、リリーは2025年末に肥満症、2026年に糖尿病治療薬として米国食品医薬品局(FDA)への承認申請を予定しており、迅速な普及戦略を進めている。オルフォグリプロンの供給体制も万全で、発売前在庫として5億5,000万ドル相当を確保済みである。

これにより、過去に起きた供給不足リスクの再発防止にも備えている。事業拡大に向けたこの周到な準備体制は、リリーがGLP-1分野におけるリーダーシップをさらに強固なものとし、長期的な競争優位性を保持するための重要な布石となるだろう。

アルツハイマー市場進出とパイプライン多角化による持続的成長への布石

イーライリリーはGLP-1領域にとどまらず、110億ドルを研究開発に投じることでパイプラインの多角化を加速している。2024年にはアルツハイマー治療薬キスンラ(Kisunla)が米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得し、200億ドル規模とされる市場への本格参入を果たした。また、がん領域ではモーフィック(Morphic)の買収によりポートフォリオを強化し、新たな成長機会の確保に努めている。

さらには、最大25%の体重減少効果が期待される三重作動薬レタルトライド(Retatrutide)も2027年までに数十億ドル規模の売上貢献が見込まれている。中国やインドといった新興市場への進出も進み、2030年までに年平均15%の売上成長率が予想される

。これにより、新型コロナワクチンの売上減に直面するファイザー(NYSE:PFE)などの競合企業を上回る成長ペースを維持する構図が浮かび上がる。事業の多角化によるリスク分散は、リリーがヘルスケア市場全体で中長期的な競争力を保持する上で極めて重要な役割を果たすだろう。

米国内生産体制強化と妥当なバリュエーションによる市場信頼の確保

イーライリリーは、米中関係悪化による関税リスクを見据え、米国内の生産体制を積極的に強化している。インディアナ州において90億ドル規模の新工場建設、さらに45億ドルを投じた「医薬品鋳造所」プロジェクトが進行中であり、ノースカロライナ州でも17億ドル規模の施設が2027年に稼働予定である。これにより、主に中国および欧州市場向け生産に依存するリスクを低減し、アメリカ市場向け供給の安定化を図っている。

現在、リリーの将来PERは38倍と高めに見えるものの、過去5年平均の45倍を下回り、2025年の1株利益予想(22.50ドル〜24.00ドル)を踏まえれば妥当な水準といえる。アナリストの平均目標株価は1,017ドル、シティグループは1,190ドルを提示しており、現在株価から19〜40%の上昇余地が見込まれている。今年2月に発表された150億ドル規模の自社株買いプログラムも、株主還元姿勢を強く示している。これらの施策は、イーライリリーへの市場の高い信頼を支える要素として今後ますます重要性を増していくだろう。

Source:24/7 Wall St.