2025年第1四半期、S&P500が4.6%下落するなか、デビッド・アインホーン率いるDMEキャピタル・マネジメントは8.2%のリターンを記録した。アインホーン氏はトランプ政権の政策リスクに対応し、2月に弱気ポジションを取り、金投資を拡大した。

同ファンドの中核銘柄は、住宅建設会社グリーン・ブリック・パートナーズ、石炭生産のコンソル・エナジー、年金・保険大手のブライトハウス・ファイナンシャルである。住宅需要と買収期待が、それぞれの成長シナリオを後押ししているが、市場の不確実性には留意が必要である。

グリーン・ブリック・パートナーズの圧倒的成長と住宅市場の堅調推移

グリーン・ブリック・パートナーズ(GRBK)は、デビッド・アインホーン氏が関与して設立された住宅建設企業であり、DMEキャピタルのポートフォリオにおいて28%を占める最大の保有銘柄となっている。GRBKはテキサス、フロリダ、ジョージアといった人口増加州に事業基盤を置き、2024年末時点で37,800区画超を保有または管理している。自社による土地保有戦略が奏功し、2020年以降は年平均成長率39%で利益を拡大し続けている。第4四半期には過去最高となる1,019戸の引き渡しを達成し、フォワードPERはわずか7倍という低水準にとどまっている。

今後も住宅市場の堅調な需要が継続する限り、GRBKは安定した収益成長を見込めると考えられる。関税による建設資材コスト上昇のリスクは存在するものの、同社の強固な資産基盤と優れた経営陣がそれを吸収する可能性は高い。株価は過去5年間で700%以上上昇した実績を有しており、足元の調整局面を経ても、再び2024年後半に記録した高値を回復する展開は十分に想定される。

コア・ナチュラル・リソーシズ誕生による成長と石炭市場の逆風

コンソル・エナジーはアーチ・リソーシズとの対等合併により、2024年に新たに「コア・ナチュラル・リソーシズ(CNR)」を誕生させた。北アパラチア盆地を中心に高生産性鉱山を保有し、ペンシルベニア鉱業コンプレックスからは年間約2,850万トンの石炭生産が可能である。CNRは米国外にも市場を広げ、2024年には売上高の10%以上を中国とインドで稼ぎ出している。しかし、米中間の関税戦争による影響で、中国政府は石炭輸入に対し15%の関税を課しており、CNRの株価は年初来で約32%下落している。

関税障壁や脱炭素化の流れが続く限り、CNRは長期的な逆風に直面する可能性がある。ただし、トランプ政権下では気候変動対策が優先される見通しは薄く、石炭需要の急減は短期的には起きにくい。過去3年間にわたり黒字を維持し続けた財務の堅牢性と、フォワードPERわずか8倍というバリュエーションの低さを踏まえれば、現状の株価水準は割安と見る向きもある。

ブライトハウス・ファイナンシャルの株価動向と買収観測リスク

ブライトハウス・ファイナンシャル(BHF)は、年金および生命保険事業を手掛ける大手企業であり、DMEキャピタルのポートフォリオにおいて約7%を占める重要銘柄である。2024年にはリスクベース資本(RBC)比率の引き上げに苦戦したが、同年後半には資産売却を含む企業戦略の見直しが報じられた。2025年3月中旬には、レイモンド・ジェームズのアナリストが同社株を「強気買い」に格上げし、株価は今年に入って約9%上昇している。

ただし、ブライトハウスの将来の株価推移は、今後の買収交渉や資産売却の成否に大きく左右される。仮に魅力的な条件での買収が実現すれば株主価値の大幅な向上が見込まれるが、交渉難航や不成立となれば、逆に市場から失望を買うリスクもある。投資家にとっては、小規模なポジションでリスクをコントロールしながら機会を狙う姿勢が求められる局面といえよう。


Source:The Motley Fool