Broadcom(ティッカー:AVGO)は、2025年時点で一時20%の下落を経験しつつも、過去1年間で45%超の上昇を遂げた。最大690億ドルのVMware買収を筆頭に、ソフトウェア事業の拡充とサブスクリプション移行を推進し、インフラソフトウェア部門の売上は前年同期比47%増の67億ドルに達した。

さらに、AIインフラ需要を捉えたネットワーキング製品と、Alphabetをはじめとする企業向けカスタムAIチップ開発で大きな市場機会を確保している。これらの動きにより、Broadcomの売上高は2027年度に1000億ドルを突破する可能性があり、同年末までに株価は現在水準から倍増するとの見方が広がっている。

Broadcomのソフトウェア事業拡大とVMware買収による成長加速

Broadcomは過去数年にわたり、CA TechnologiesやSymantecの企業向け事業買収を通じてソフトウェア分野への進出を進めてきたが、2023年11月に完了したVMwareの690億ドル規模の買収によって、その戦略が大きく加速している。VMwareのクラウド仮想化プラットフォーム「VMware Cloud Foundation(VCF)」を軸に、Broadcomはサブスクリプションモデルへの移行を推進し、顧客の60%がすでに移行を完了した。

これによりインフラソフトウェア部門の売上は前年同期比47%増の67億ドルに達し、今後も二桁成長が見込まれている。ハイブリッドクラウド需要の拡大に伴い、企業がAIワークロードの最適化を急ぐ中、VCFの利便性が一層高まっているとみられる。

こうしたBroadcomの動きは、単なるソフトウェア売上の増加にとどまらず、収益の安定性と長期契約によるキャッシュフロー改善をもたらしている点が注目に値する。また、ハードウェア依存度を下げることで景気変動への耐性も強化される可能性がある。ただし、VMware事業の統合過程における顧客離れや、ライセンス体系変更に対する抵抗感といったリスクは依然として存在しており、今後の推移には慎重な注視が求められる。

AIインフラ需要の拡大がBroadcomのハードウェア事業を牽引

Broadcomのハードウェア部門では、AIインフラの急速な普及を背景に、ネットワーキングおよびASIC(アプリケーション特化型集積回路)事業が中核的な成長エンジンとなりつつある。Ethernetスイッチ、光受信機、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークインターフェースカード(NIC)といった製品群は、巨大化・複雑化するAIチップクラスター間のデータ転送を支えるインフラとして不可欠であり、今後の需要拡大が確実視されている。特に、データセンター間の長距離通信を担う光関連製品群は、AI普及に伴い急速に市場が拡大している。

また、Broadcomは、Alphabet(Google)向けにTensor Processing Unit(TPU)を共同開発した実績を背景に、カスタムAIチップ設計の受注を拡大している。これにより、2027会計年度にはカスタムチップ市場で600億~900億ドル規模の機会が見込まれる。高騰するNvidia製GPUの代替策として、省電力・高性能なカスタムチップの需要が企業間で高まっている点も追い風となっている。ただし、カスタム設計には巨額の初期投資と長期の開発期間が不可欠であり、製品化リスクも内包しているため、過度な楽観視は禁物である。

Broadcomの業績見通しと株価倍増シナリオの現実性

Broadcomは、2024会計年度に516億ドルの売上を達成しており、カスタムAIチップ事業の拡大およびVMware部門の持続的成長により、2027会計年度には売上高が1000億ドルを超える可能性が示唆されている。

仮に粗利益率75%を維持し、追加費用を考慮したうえで1株当たり利益(EPS)が16.75ドルに達すると仮定すれば、現在の株価水準から2倍近い成長も視野に入る。さらに、2028会計年度にはApple向けなど追加売上が150億ドル規模で上積みされる可能性もあるとされる。

ただし、このシナリオの実現には複数の前提条件が必要であり、カスタムAIチップ市場の競争激化やVMware統合による不確実性を無視することはできない。また、米国テクノロジー分野に1.5兆ドル超の資金流入が続くとの期待感も、政治・経済環境次第で揺らぐリスクを孕んでいる。Broadcom株の長期的上昇余地は大きい一方、これらリスク要因を慎重に見極める姿勢が不可欠となるだろう。

Source:The Motley Fool