テスラ(TSLA)は、関税の不透明感とイーロン・マスクCEOの政治活動によるブランド毀損が重なり、事業環境が急速に悪化している。第1四半期決算は市場予想を大きく下回り、欧州と中国市場では販売台数が著しく減少した。

中古テスラ車の価格も3月に前年比で大幅に下落し、モデルSは17.2%減、モデルYは13.1%減を記録した。株価はマスク氏のロボタクシー計画表明で一時反発したものの、依然として年初来30%下落し、バリュエーション水準も過去比で高止まりしている。テスラが市場の信頼を取り戻すには、競争激化と経済環境悪化への抜本的な対策が求められる。

中古テスラ価格急落が示すブランド毀損と需要減退の現実

テスラ(TSLA)の中古車価格が大幅に下落している事実は、単なる一過性の問題ではなく、同社のブランド価値と市場需要の深刻な低下を象徴している。2025年3月時点で、モデルSは前年比17.2%、モデルYは13.1%、モデル3は10.9%、モデルXは7.3%それぞれ価格が下落しており、他ブランドに比べても急激な値下がり幅を示している。この背景には、関税の不確実性が中国市場に与える影響、政治的抗議活動によるブランドイメージ悪化、さらには第1四半期決算で明らかとなった販売不振が絡み合っている。

こうした複合的要因により、消費者はテスラ車の将来価値に疑念を抱き、リセールバリューの低下が加速している状況である。とりわけ、中国市場でのシェア縮小は、競合であるBYD(BYDDY)による攻勢が拍車をかけた。さらに、欧州市場でも納車台数が前年同期比で49%減少しており、電気自動車市場全体が24%成長している中でのこの落ち込みは深刻といえる。

一方で、テスラはロボタクシー計画など将来への布石を打っているものの、中古市場での価格下落は、ブランドロイヤルティと商品価値への信頼が揺らいでいることを物語っている。市場が今後もこの信頼低下を織り込むなら、テスラ株はさらなる調整局面を迎えるリスクを抱えている。

決算未達と高バリュエーションの矛盾が浮き彫りにする成長課題

テスラの2025年第1四半期決算は、売上高193.4億ドル(前年比9.2%減)、純利益3億9900万ドルと、市場予想を大きく下回る結果となった。調整後EPSも0.27ドルにとどまり、アナリスト予想の0.41ドルを大幅に下回った。

この失速の主因は、モデルYの一時的な生産停止と、コスト高騰に伴う営業利益率の悪化にある。第1四半期のフリーキャッシュフローがプラス6億6400万ドルへと回復した点は一定の評価材料だが、根本的な成長鈍化への懸念は払拭できていない。

特筆すべきは、テスラ株のバリュエーションが依然として高水準にある点である。現在のP/Eレシオは117倍、P/Sレシオは8.3倍に達しており、セクター中央値の13倍、0.8倍と比較して著しく割高である。この水準は、同社が将来にわたる高成長を維持することを前提とした期待の表れに他ならない。しかし、第1四半期における売上と利益の急減は、この期待に現実が追いついていないことを浮き彫りにした。

市場ではロボタクシー導入計画による成長再加速への期待が根強いものの、既存事業の収益基盤に揺らぎが生じている現状では、期待だけでは現在の株価水準を正当化しきれない可能性がある。テスラが再び持続的な成長軌道に乗るためには、競争激化と経済環境悪化に耐えうる新たな成長戦略の確立が不可欠である。

Source:Barchart.com