ドナルド・トランプ前大統領の関税政策を背景に、米国製造業の再興を目指す動きが加速する中、台湾セミコンダクター(TSMC)とイーライリリー(Eli Lilly)が大規模な投資計画を発表した。TSMCは1000億ドルを投じて新工場や研究開発施設を設立予定であり、イーライリリーも米国内に4拠点の新設を計画している。

両社はいずれもアナリストから「ストロングバイ」評価を受け、今後の売上高と利益の成長率で業界平均を大きく上回る見通しとされる。これらの動きは、米国内製造力の復権を支える有力な推進力となる可能性がある。

TSMCとイーライリリーが示す米国製造業再興への本格投資計画

台湾セミコンダクター(TSMC)は、米国製造拠点拡充に向け1000億ドル規模の巨額投資を打ち出し、3つの新工場と2つの先端パッケージング施設、研究開発センターの設立を計画している。加えて、イーライリリー(Eli Lilly)も米国内で4カ所の製造施設を新設する方針を掲げており、米国における生産体制強化を鮮明に打ち出した。これらの取り組みは、トランプ政権時代に始まった関税政策による製造回帰の流れを受け、産業界全体に広がる動きを象徴している。

両社ともアナリストから「ストロングバイ」の高評価を得ており、TSMCは今後24.57%、イーライリリーは28.04%の売上高成長率が見込まれるなど、業界中央値を大幅に上回る成長期待が示されている。米国経済の製造基盤を強化する上で、これら2社の積極投資は確かな推進力となる可能性がある。

イーライリリーの新薬開発力が牽引する驚異的な成長軌道

イーライリリーは、過去10年間で売上高8.67%、利益16.05%という年平均成長率(CAGR)を達成し、2025年第1四半期には売上高135億3000万ドル、純利益5.32ドルという市場予想を大幅に上回る好業績を記録した。特に糖尿病治療薬モウンジャロ(Mounjaro)の売上高は35億ドルに達し、前年から60%の成長を見せた。

さらに、体重減少に効果を示す新薬オルフォグリプロン(orforglipron)の第3相試験では、主要目標を達成するとともに、40週間で7.9%の体重減少という顕著な成果も確認されている。この開発力の高さは、既存製品群の成長と新規パイプラインの拡充を両立させる原動力となっている。将来的には、レブリキズマブ(lebrikizumab)による湿疹市場でのシェア拡大や、小分子経口阻害剤MORF-057による免疫学領域でのポジション強化も期待されており、イーライリリーの成長力には引き続き高い注目が集まる。

TSMCの高水準業績と米国戦略拡大が示すファウンドリー市場の支配力

TSMCは、2025年第1四半期に売上高255億3000万ドル、純利益1株あたり2.12ドルという好調な業績を発表し、市場予想を超える結果を示した。過去16四半期のうち予想を下回ったのはわずか2回のみであり、極めて安定した業績を維持している。

同社の売上高成長率は35.3%、利益成長率は53.6%と突出しており、特に台湾ドルベースでは純利益が60%増加するなど、為替影響を超えた強い成長力を見せた。2025年第2四半期も売上高ガイダンスを前年同期比38.3%増と見込んでおり、3nmプロセスを中心とした先端製造技術が堅調な需要を支えている。さらに米国内における積極的な設備投資により、関税リスクを抑えながら米国市場への供給体制を強化しており、長期にわたるファウンドリー市場支配力の維持が期待される。

Source:Barchart.com