Microsoftは、Windows 11のCopilot+ PC向けに新たなAI機能「Recall」の一般提供を開始した。Recallは定期的に保存されたスクリーンショットをもとに、自然言語での精緻な検索体験を可能にするもので、強力なNPUを前提とした設計となっている。併せて、コンテキストベースで操作提案を行う「Click to Do」や、自然言語対応による基本検索機能の強化も実施された。

Recallはプライバシー保護に配慮した設計がなされ、オプトイン形式、ローカルデータ処理、データ暗号化、完全削除のオプションが提供される。これらの機能は2025年4月のプレビューアップデートから順次配信されるが、欧州経済領域では導入が遅れる見通しである。なお、自然言語による検索機能の大幅な進化が、Recall以上にCopilot+ PC普及の鍵を握る可能性が指摘されている。

RecallとClick to DoがもたらすWindows 11のAI革新

Microsoftは、Windows 11においてCopilot+ PC専用機能としてRecallとClick to Doを正式公開した。Recallは定期的に取得されるスクリーンショットを活用し、自然言語による高速かつ直感的な検索体験を実現するものであり、強力なNPUの搭載を前提条件としている。

一方、Click to Doは利用者の文脈に応じたアクション提案を可能にし、リーディングコーチとの統合など、柔軟なタスク支援を視野に入れた設計となっている。

これらの機能に加え、Windows 11ではタスクバーからの自然言語検索機能も刷新され、例えば「ビーチにいる犬の写真」と入力すれば、クラウド及びローカルデバイスから対象画像が即座に抽出される。

さらに、ライブキャプション機能も拡充され、簡体字中国語を含む27言語へのリアルタイム翻訳が可能となった。4月の2025年プレビューアップデートより順次展開されるが、地域によっては導入時期が遅れる見通しである。

MicrosoftがRecallとClick to Doを通じて目指すのは、単なる利便性向上ではなく、デバイス内体験の最適化に他ならない。特にCopilot+ PCというハードウェア条件を前提にすることで、真にストレスのないAIサポート環境を構築しようとする意図が明確である。Recall単体よりも、これら複合的な改善がCopilot+ PCの普及に与える影響は無視できないだろう。

Recallのプライバシー対策と利用者への影響

Recallは、これまでプライバシーリスクへの懸念から議論を呼んできた経緯を持つ。Microsoftは今回、Recallをオプトイン方式とし、データはすべてローカルデバイス上で暗号化処理され、外部共有されないことを強調した。また、Windows Helloによる認証機構、Recall内データの分離管理、さらに機能自体の完全削除も可能とするなど、多層的なセキュリティ対策を講じている。

Recallデータがクラウドへ送信されることはなく、Microsoft自身もアクセスできない仕組みであり、これにより企業利用におけるコンプライアンス懸念も一定程度払拭されると考えられる。加えて、保存対象のカスタマイズやフィルタリング設定が可能な点も、情報漏洩リスクへの対策として有効に機能するだろう。プライバシー対策に関する公式ドキュメントも整備され、透明性向上への努力が見られる。

ただし、プライバシーリスクをゼロとすることは理論上困難である。スクリーンショットという性質上、意図せぬ情報が保存される可能性を完全に排除することはできず、Recallの運用には常に慎重さが求められる。特に機密性の高い業務を取り扱う領域においては、Recallの利用可否について組織単位で明確なポリシー策定が必要不可欠となるだろう。

Copilot+ PCの本命機能は自然言語検索にあり

Recallの登場が大きな話題となっている一方、Copilot+ PCにおける真の注目機能は、自然言語による基本検索の進化にある。これまでWindows 10および11では、タスクバー検索機能が十分な評価を得てこなかったが、今回、自然言語処理の導入により飛躍的な精度向上と利便性の向上が図られた。具体的には、対象コンテンツの即時抽出や整理作業の効率化が実現されている。

Microsoftは独自調査に基づき、Copilot+デバイスでは、画像検索からフォルダー整理までの所要時間が最大70%短縮されたと主張している。これにより、日常的な作業の生産性向上が期待され、企業システム全体の業務効率化にも寄与する可能性が高い。また、自然言語検索機能の質が向上することは、RecallやClick to Doといった他のAI機能との連携効果をさらに高める要因ともなる。

現時点では、自然言語検索の高度な機能はCopilot+ PC専用とされているが、将来的にこれがより広範なWindows 11デバイスに展開されるか否かが注目される。仮に普及が進めば、PC市場全体のトレンドをも左右する要素となるだろう。Recallの影に隠れがちだが、自然言語検索こそがCopilot+ PC導入の本質的な動機となることは間違いない。

Source:TechRadar