テスラが中国市場向けに「E80」と呼ばれる新型オール電動クロスオーバーの生産準備を進めているとの噂が浮上した。モデルYをベースにした7人乗り仕様とされ、早ければ来月にも製造が開始される可能性が指摘されている。これにより、テスラが新製品投入の遅れを取り戻す契機になるとの期待が高まる。
一方、テスラ株は年初来高値から約37%下落しており、マクロ経済不安や政治リスクが依然として重くのしかかる。ただ、カンター・フィッツジェラルドはロボタクシー事業開始を追い風に株価が30%上昇する余地があると見ており、目標価格を355ドルに設定して強気姿勢を崩していない。
テスラ「E80」生産開始の噂が浮上 新型クロスオーバーの正体とは

テスラが中国で準備中とされる「E80」は、モデルYをベースにホイールベースを延長した7人乗りのオール電動クロスオーバーである可能性が指摘されている。バーチャートによると、来月にも生産が始まる見通しがあり、これが実現すれば新型投入の遅れという批判を払拭できると期待されている。現在、テスラはEV市場において競争力の低下が懸念されているが、より多人数向けのモデルを投入することで新たな市場ニーズに応え、ラインアップの多様化を進める狙いが読み取れる。この動きは中国市場でのシェア拡大を目指す戦略にも直結しており、競合他社との違いを明確に打ち出す試みといえそうだ。
一方、噂が事実であった場合でも、投入タイミングや価格設定が不透明であり、消費者の関心を維持できるかどうかは慎重に見極める必要がある。特に近年の中国EV市場は価格競争が激しく、単なる7人乗り仕様だけでは差別化が難しいとの見方も根強い。テスラに求められるのは、単なる新型車ではなく、ユーザーにとって魅力的な付加価値を持つ提案であると考えられる。
テスラ株の下落とマクロリスク 強気姿勢を維持するカンター社の評価
テスラの株価は年初来高値から約37%下落しているが、カンター・フィッツジェラルドは強気のスタンスを維持している。同社アナリストは、マクロ経済の不透明感やイーロン・マスクの政治的関与リスクを認識しつつも、6月に開始予定のロボタクシー事業が株価回復の重要な起点になると見込んでいる。目標株価を355ドルに据え置き、現在の株価から約30%の上昇余地があると評価している点は注目に値する。
他方で、市場全体のコンセンサスはやや慎重であり、アナリストの平均目標株価は285ドルにとどまっている。このギャップは、テスラの成長戦略に対する評価の違いを反映している。今後、ロボタクシー構想が現実のものとなり収益に貢献するか否かが、カンター社の見立てが正しかったかどうかを決定づけることになるだろう。テスラにとって、期待を裏切らない具体的な成果の提示が不可欠である。
イーロン・マスクの方針転換とブランド信頼回復への影響
カンター・フィッツジェラルドは、イーロン・マスクが政治活動から距離を置く意向を示した点を、テスラブランドの信頼回復にとって好材料と捉えている。バーチャートによると、マスクが本業に専念することで、EVメーカーとしての本来の姿を取り戻し、世界中の消費者や投資家からの信頼が再び高まる可能性があると指摘している。この方向性が、これまでのブランド毀損リスクを緩和する動きとして注目される。
とはいえ、テスラに対する懐疑的な見方が市場に根強く残る以上、短期的にブランド力が急回復するとは限らない。信頼を再構築するには、製品品質やサービス体験といった基本的な領域での実績積み上げが欠かせない。マスクの発信力に頼るだけでは限界があり、企業全体として地道な取り組みを継続することが、長期的なブランド価値向上に不可欠であると考えられる。
Source:Barchart.com