Nvidiaの株価は2025年に入り19%下落し、主因は中国DeepSeekによる低コストLLM発表と米国のH20チップ輸出規制である。特に中国市場での170億ドル超の売上に影響が及ぶ懸念が高まっている。
一方、データセンター事業は1152億ドルを記録し前年比2倍以上の成長、Blackwellアーキテクチャの好調な立ち上げも明らかとなった。Spectrum-XやNVLink Switchを中心にネットワーキング事業も成長軌道に復帰している。
市場ではPER27倍台と評価が割安感を示し、ウォール街の目標株価は現水準から56%上昇余地ありとされる。短期的な逆風を受けつつも、Nvidiaの長期成長シナリオはなお堅固と見られる。
Nvidia株下落の背景にある二重の逆風とは

2025年に入り、Nvidiaの株価は年初来で19%下落した。この急落の主因は、中国のスタートアップDeepSeekによる低コスト大規模言語モデル(LLM)の発表と、米国政府によるH20チップの対中輸出規制である。DeepSeekの成果により、AI開発に必要不可欠とされてきたNvidia製GPUの需要減退が懸念された。さらに、輸出規制の影響により、NvidiaはSECへの提出資料で約55億ドルの損失を見込んでいることが明らかになった。
特に深刻なのは、中国市場での収益構造への影響である。Nvidiaは2025年度に中国市場で170億ドル以上の売上を記録しており、今後の成長性に不透明感が広がった。これらの複合要因が、Nvidia株の投資家心理を冷やす要素として機能したと考えられる。
とはいえ、現時点では市場が過度に短期的なリスクを織り込みすぎている印象もある。長期的なAI需要の拡大を背景に、Nvidiaの本質的な成長力が損なわれたとは言い切れない。これらの逆風を乗り越えた先に、再び市場の注目を集める展開が訪れる可能性は残されている。
データセンターとネットワーキング事業が支える成長基盤
短期的な株価の低迷とは裏腹に、Nvidiaの基幹事業であるデータセンター部門は極めて堅調に推移している。2025年度において、データセンター収益は前年比で2倍以上となる1152億ドルに達し、第4四半期単独でも356億ドルという力強い実績を上げた。この成長は、BlackwellアーキテクチャとHopper 200の普及に支えられている。
Blackwellは推論AIに特化して設計され、処理能力を飛躍的に向上させつつ、コストをHopper 100比で大幅に削減することに成功している。加えて、ネットワーキング事業ではSpectrum-XとNVLink Switchが成長を牽引し、第1四半期以降も好調な展開が見込まれている。CiscoがSpectrum-Xを自社ネットワークに組み込むことを発表したことも、拡大の追い風となるだろう。
データセンターとネットワーキングの両部門は、AIインフラ拡大の流れに合致しており、Nvidiaの中長期的な成長ストーリーを下支えする要素となる。この二本柱がある限り、短期的な株価変動に過剰反応する必要はないと判断できる。
魅力を増すNvidia株の投資妙味
現在のNvidia株は、予想PERが約27.65倍と、過去の水準と比較して割安感が出ている。2026年度に36.9%、2027年度に24.7%のEPS成長が予想されているにもかかわらず、このバリュエーションで取引されているのは注目に値する。加えて、ウォール街のアナリストコンセンサスでは「強い買い」の評価が多数を占めており、平均目標株価は167.80ドルと、現在水準から56%の上昇余地が示唆されている。
AIインフラ需要の拡大、エンタープライズAIやフィジカルAIなどの新トレンドへの対応、自動車向け収益の拡大といった複数の成長ドライバーが明確である以上、Nvidia株を今の水準で見直す動きが加速しても不思議ではない。特に長期投資の観点では、現在の価格帯は魅力的なエントリーポイントと捉えられる。
短期の逆風を懸念して過小評価されている状況は、将来的なリターンを考慮すれば好機と映る。成長を支える事業基盤と今後の需要拡大を見据えれば、Nvidiaは依然として注目に値する存在である。
Source:Barchart.com