AMDは2025年5月21日のComputex基調講演において、RDNA 4アーキテクチャを採用した新型GPU「Radeon RX 9060 XT」を発表する見込みである。台湾メディアBenchlifeによれば、製品の市場投入は6月中になる可能性が高く、発表から短期間でのリリースが期待されている。

RX 9060 XTは、32基のコンピュートユニットと128ビットのメモリバスを採用しつつ、上位モデルよりも高いクロック速度を誇るとされる。RX 7600シリーズと同等のユニット数ながらも、RDNA 4の設計改良によりCU単位の性能が大幅に向上する見通しであり、NVIDIAのGeForce RTX 5060に対抗する戦略的な製品として注目を集めている。

価格設定次第では、RX 9060 XTはコストパフォーマンスを重視する層に訴求し、主力ミドルレンジ市場の競争構図を塗り替える可能性がある。

Radeon RX 9060 XTの構成詳細とRDNA 4の技術的革新

AMDが発表を予定しているRadeon RX 9060 XTは、32基のコンピュートユニットと128ビットメモリバスを採用することで、上位モデルのRX 9070 XTと比較して構成上の差異が明確である。ただし、クロック周波数においては9060 XTの方が優れており、プロセス設計の最適化によって高性能動作が可能になる見通しがある。

アーキテクチャには、RDNA 4世代が用いられており、従来のRDNA 3と比してCU単位の効率向上が図られている。特に、RX 7600シリーズと同等のCU数を維持しながらも、ゲーム性能で上回る点が焦点となっている。

これにより、9060 XTはAMDのローエンド帯に位置しながらも、性能面では従来の中位クラスを凌ぐ可能性を秘めている。構成上のバランスと設計思想は、特定の用途に最適化されたGPUとしての価値を引き出す狙いがあると考えられる。スペックの整合性や帯域幅の制限はあるものの、価格帯次第でコストパフォーマンスに優れた製品として市場に受け入れられる素地は十分に整っている。

Computexでの発表と市場投入時期に見るAMDの販売戦略

Benchlifeが報じた内容によれば、RX 9060 XTの正式発表は2025年5月21日に台湾で開催されるComputexの基調講演で行われる見込みである。また、この発表から短期間である6月中にも市場投入される可能性が示されており、AMDは競合製品に対する迅速な反応を意図していると解釈できる。タイミングとしては、NVIDIAがGeForce RTX 5060 8GB GDDR7を投入した直後であり、これに呼応する形でAMDもRX 9070 XTと共に9060 XTを前面に押し出す構図となっている。

このような素早い展開は、ミドルレンジGPU市場での主導権獲得を視野に入れた対応と見られる。特に価格競争力が重要視されるセグメントにおいて、製品投入の早さはそのまま販売機会の最大化に直結する。さらに、Computexという国際的な舞台での発表は、製品への注目度を一気に高め、パートナー企業や流通網との連携にも有利に作用する。一方で、詳細な価格設定や性能ベンチマークが未公表の段階では、消費者の判断材料が限られており、AMDが発表時に提示するデータの内容が今後の評価を左右することとなろう。

ミドルレンジGPU市場におけるRX 9060 XTの競争的立ち位置

RX 9060 XTの導入により、AMDはミドルレンジGPU市場で新たな競争軸を構築しようとしている。構成上、RX 9060 XTはRTX 5060の8GBモデルと性能帯が重なる可能性があるが、アーキテクチャの新しさと高クロックによってゲーム性能で優位性を示す余地がある。RX 7600 XTに代わる存在として、次世代ゲーミングPCの標準構成に組み込まれることも視野に入り、ミドルレンジ帯における価格対性能比の基準を塗り替える可能性がある。

ただし、競争力の中心はあくまで価格設定に帰結する。NVIDIAの市場支配力が依然として強い中で、RX 9060 XTがそのシェアを切り崩すには、コストパフォーマンスだけでなく、製品としての完成度や流通の整備も問われる。特に、AMDがRDNA 4を投入した初の下位モデルとして9060 XTを位置付けるのであれば、ブランドイメージと実パフォーマンスの一致が強く求められる。最終的な製品評価は、発売後の実地テストによって明らかになるが、少なくとも市場へのインパクトは確実に与える起点となる可能性がある。

Source:OC3D