米サーバーメーカーのSuper Micro Computerは、2025年3月期の業績予想を大幅に下方修正し、時間外取引で株価が約16%急落した。同社は、顧客による次世代プラットフォームへの移行判断の遅れと、旧世代製品の在庫引当金増加が収益圧迫の要因と説明。
特に、NVIDIAの最新AI向けGPU「Blackwell」への需要集中が、従来の「Hopper」世代に偏ったSuper Microの販売構成に打撃を与えているとみられる。市場では、Hewlett Packard Enterpriseも同様にBlackwellサーバーへの売上依存が高まっていると述べており、AIサーバー業界全体で在庫再編と世代交代が急速に進んでいる様子がうかがえる。
顧客の判断遅延と旧世代製品の在庫圧力が業績を直撃

Super Micro Computerは、2025年3月期の売上高を従来予想の50億〜60億ドルから、45億〜46億ドルへと大幅に引き下げた。同時に、調整後EPSも42セント〜62セントから29セント〜31セントに下方修正された。主な要因として、顧客による次世代プラットフォームへの導入判断の遅延と、旧世代製品に関する在庫引当金の増加が挙げられている。同社は、これらの影響により粗利益率も前四半期比で220ベーシスポイント減少したと発表した。
このような状況は、同社の売上構成が旧型GPUや従来型メモリ製品に偏っていることを反映しており、新技術への需要変化に適応できていない脆弱性が浮き彫りとなった。加えて、タイムトゥマーケットを急ぐコスト負担が利益圧迫を助長したとされる。ここから見えるのは、急激な技術革新に対する供給側の柔軟性不足である。業界構造が高速に変化する中、在庫管理や製品ポートフォリオの更新戦略に再考が迫られている。
NVIDIA「Blackwell」シフトによる市場の急変が背景
Super Microの下方修正は、単なる一企業の問題にとどまらない。背景には、NVIDIAが発表したAI向けGPUの最新プラットフォーム「Blackwell」への市場の関心集中がある。Blackwellは高帯域幅メモリを採用し、旧世代の「Hopper」よりも高い性能を発揮する。NVIDIAはすでにこの新製品の在庫を完売しており、顧客企業は現行製品を敬遠し、新技術への移行を待つ姿勢を強めている。
Evercore ISIは、Super MicroがHopper構成に偏っていることを指摘し、顧客がBlackwell対応を見越して発注を先延ばしにしているとの見方を示した。同様の傾向はHewlett Packard Enterpriseの決算コメントからも明らかであり、AIサーバー市場全体で70%以上がBlackwellベースへとシフトしている。これにより、旧世代GPUを中心に構成された企業は在庫負担と収益悪化のリスクを抱える構図となっている。製品ライフサイクルの短縮が、サプライヤーにかつてない戦略の俊敏さを要求している。
急落した株価の背景にある構造的リスクと市場の期待値
Super Microの株価は、時間外取引で約16%下落した。2月には一時60ドル台まで上昇し、Nasdaqの報告義務問題も解消され期待が高まっていたが、今回の失望的な業績見通しがその期待を裏切った形となった。売上未達に加え、在庫関連コストの増加が利益率を押し下げ、投資家心理を冷やした格好である。
AIサーバー分野における将来性は依然高いものの、世代交代の波に遅れることで短期的には深刻な収益圧迫が生じ得る。とりわけ、Blackwellへの需要集中が旧世代在庫の評価減や需給ギャップを拡大させており、これが業績不安に拍車をかけている。市場は依然としてAI関連企業に成長性を見ているが、最新技術への即応体制の有無が中期的な評価を大きく左右する局面に入っていると考えられる。今後の決算内容とガイダンスに市場の注目が集まる。
Source:msn