2025年第1四半期、テスラは売上・純利益ともに大幅な減少に直面し、過去最大の業績不振を記録した。だが真の問題は数字ではなく、「ブランド価値の崩壊」にあると、著名投資家ロス・ガーバー氏が厳しく警告している。同氏は「人々はもはやテスラを望んでいない」と述べ、特にCEOイーロン・マスクの政治的言動や、ブランドが個人色に染まりすぎた点を深刻視している。

ブランドコンサルタントやアナリストも「テスラは企業としての声を失い、マスク氏のイメージに依存した“パーソナリティブランド”に変貌した」と分析する。環境意識の高い層が離反する中、サイバートラック不振や欧州での販売急減など、象徴的な数字が変化を裏付ける。株価は依然として投機的熱狂に支えられているが、構造的なブランド毀損が進めば、市場評価は急落するリスクを孕んでいる。

ブランド毀損の深刻化と販売実績の急落

テスラは2025年第1四半期において、売上の大幅減少と純利益の71%減という衝撃的な決算を発表した。特に納車台数は前年同期の約387,000台から約337,000台へと減少し、欧州市場では販売が49%も落ち込むなど、地域別でも著しい不振が顕著である。

こうした実績不振の背後には、単なる製造遅延や価格競争では説明しきれない根本的な要因が存在している。JPモルガンなどの大手アナリストは、消費者の間に広がる「前例のないブランド損傷」に警鐘を鳴らしており、構造的な問題としての認識が強まっている。

ロス・ガーバー氏が指摘するように、テスラはもはや高級EVの象徴ではなくなり、多くの消費者にとって避けるべき「有毒なブランド」に変質した。とりわけサイバートラックの販売不振は、商品そのものの競争力以上に、ブランドイメージの毀損が顧客離れを加速させていることを示唆している。マスク氏が「再びテスラに集中する」と表明しても、その効果が限定的である理由は、顧客との関係性の基盤が既に揺らいでいるためである。数字の悪化だけでなく、その裏側にある無形資産の劣化こそが、テスラの直面する最大の危機といえる。

CEOの言動とブランドアイデンティティの逸脱

ユニス・シン氏やアレン・アダムソン氏といったブランド専門家たちは、テスラのブランドが本来持っていた「環境への使命感」や「技術革新の象徴」といった価値を喪失し、現在ではイーロン・マスク個人の思想や言動に全面的に依存する“パーソナリティブランド”へと変貌したと分析する。DOGE(政府効率省)での政治活動や、X(旧Twitter)上での過激な発言が、これまでの支持層に対して逆効果を生み、ブランドに対する嫌悪感を増幅させている点が問題の本質である。

このような変化は、消費者の購買判断に直接的な悪影響を及ぼす。かつては「工場の床で寝る経営者」として尊敬を集めたマスク氏だが、今やその姿は政治的論争の中心人物に映り、多くの市場参加者から懸念を招いている。企業ブランドと個人ブランドの境界が曖昧になればなるほど、企業イメージの制御は困難になる。市場の半分を自ら切り捨てるかのような発言が繰り返されれば、長期的にはロイヤルティを喪失し、再構築には極めて困難な道のりを要することになる。

株価上昇と構造的リスクの乖離

TSLA株は現在、マスク氏による「テスラへの専念」表明や、ロボタクシー、オプティマスといった話題転換によって個人投資家の関心を集め、上昇傾向にある。しかし、こうした株価上昇は企業の本質的価値とは乖離しており、短期的な材料による投機的反応に過ぎないとの見方が強い。実際、ガーバー氏はTSLA株が125ドルまで下落する可能性に言及しており、現在の市場評価が過剰であることを警告している。

テスラの株価は過去の収益の154倍という極端な倍率で評価されているが、業績不振が四半期ごとに続けば、この評価水準を維持するのは困難である。ブランドイメージの失墜による構造的な需要減少は、一時的なプロダクトイノベーションやCEOの声明では覆い隠せない。したがって、投資家に求められるのは話題性ではなく、ブランドと業績の実質的な修復可能性に対する冷静な評価である。株価の勢いと企業の実体との間にあるギャップが広がり続ければ、次なる調整は必然の帰結となろう。

Source: Barchart.com