2025年4月25日、トランプ政権が自動運転車規制の大幅緩和を表明したことを受け、テスラ株は約10%上昇した。この政策変更は、マスクCEOが推進するロボタクシー構想にとって規制面での大きな支援となり、テスラの将来性への投資家の期待を強めている。
テスラ株は最近の決算で大幅な減益を発表していたにもかかわらず、5日間で18%以上反発し、S&P500を上回るパフォーマンスを示した。P/EやP/Sなどの指標はいずれも割高な水準だが、自動運転とAI技術を軸とした成長戦略が高く評価されている。一方、アナリストの評価は依然として「ホールド」が中心で、先行きには慎重姿勢も根強い。
トランプ政権の規制緩和方針が自動運転業界に与える構造的転換

ドナルド・トランプ政権が2025年4月に発表した自動運転車規制の緩和方針は、テスラを筆頭とする次世代モビリティ企業にとって根本的な事業環境の変化を意味する。これまで安全性や責任所在の不明確さから進展が遅れていた米国の自動運転政策が、国策レベルで推進に舵を切ったことで、長期的な市場拡大に向けた制度的な障壁が一部取り払われる見通しとなった。
特に注目すべきは、イーロン・マスクCEOが長年にわたって構想してきたロボタクシー構想との親和性である。現行のコンプライアンス要件が緩和されることで、実証段階から商用展開への移行速度が加速し、テスラが同市場において先行的地位を確保する可能性が高まる。また、AIやセンサーシステムの開発負担が軽減されることで、他の企業に対する競争優位性も相対的に強化されるとみられる。
もっとも、今回の規制緩和がどのような具体的項目に及ぶかは明示されておらず、安全性や事故発生時の責任分担など、多くの技術的・法的課題は依然として未解決のままである。したがって、制度面の追い風はあっても、実際の市場浸透には引き続き慎重な検証と段階的な導入が求められる局面が続くことになるだろう。
決算失速と株価急騰の乖離が示すテスラ株の構造的リスク
2025年第1四半期に発表されたテスラの決算は、GAAPベースのEPSが0.12ドルにとどまり、事前予想の0.27ドルを大きく下回った。売上高も前年同期比9%減の193億4000万ドル、純利益は前年の13億9000万ドルから4億900万ドルへと71%減少し、自動車部門の販売低迷と価格引き下げの影響が色濃く出た。Model 3およびModel Yの出荷減と為替影響、そして研究開発費の増加が、収益圧迫の主因とされている。
こうした業績悪化にもかかわらず、株価は同期間に18%超上昇し、S&P500指数を凌駕する動きを見せた。背景には、規制緩和を受けたロボタクシー計画への期待感と、AI・自動運転関連分野での戦略的プレゼンスへの評価があると考えられる。しかし、足元の業績と将来ビジョンの間には大きな乖離があり、現在の株価水準が持続可能であるかには慎重な判断が求められる。
テスラの株価指標はP/Eが154.03倍、P/Sが9.4倍、P/Bが12.18倍と歴史的に見ても割高であり、短期的な材料に反応しやすい状況が続いている。アナリストの平均目標株価が現在水準とほぼ一致していることも、市場の将来見通しに対する不透明感を反映している。投資家としては、テスラが提示する成長戦略の実現性と、それを支える技術的基盤・収益モデルの健全性を冷静に見極める必要がある。
Source: Barchart.com