Microsoftは2025年7月より、Windows Serverに対して再起動不要でセキュリティパッチを適用可能とする「ホットパッチ」機能の正式提供を開始する。
この新機能はAzure Arcに登録された環境で1CPUコアあたり月額1.50ドルで利用可能となり、年間8回の通常更新を再起動なしで実行できる仕組みである。
本機能は既にDatacenter Azure EditionやXbox開発チームで運用実績があり、業務中断リスクの低減やセキュリティ対応の迅速化に寄与するとされている。
サーバー再起動を年4回に限定 Microsoftが提示するホットパッチの運用設計

Microsoftが2025年7月より提供開始するホットパッチ機能は、Windows Serverにおける従来のパッチ適用プロセスを根底から見直すものである。
本機能では、1月・4月・7月・10月に実施される「ベースライン」パッチのみが再起動を伴い、それ以外の年間8回の更新はメモリ内で即時反映される。従来のように月例アップデートのたびに計画的なダウンタイムを設ける必要はなくなり、システム稼働率の向上に直結する設計となっている。
Azure Arcへの登録と機能の有効化により、このホットパッチは1CPUコアあたり月額1.50ドルというコストで導入可能であり、予算的にも柔軟性を持つ。
すでにWindows Server Datacenter Azure Editionでは運用されており、Xboxチームがこの技術によって開発期間を数週間から数日に短縮したという実績も示されている。Microsoftはこの技術を通じて、Linuxの一部ディストリビューションやVMwareが実現している「無停止アップデート」に追随する姿勢を鮮明にした。
本機能の登場は、従来のOS設計思想において不可避とされてきた「再起動による構成再読み込み」そのものの意義を問い直すものであり、エンタープライズITにおけるメンテナンスのあり方に大きな転換を迫る兆しと捉えられる。
可用性とセキュリティの両立に向けたアプローチ 運用現場に与える長期的影響
ホットパッチ機能がもたらす最も重要な意義は、稼働中のサーバー環境に対するリアルタイムなセキュリティ強化の実現である。Microsoftは、パッチ適用のタイミングを「再起動可能な時間帯」に制約される従来型モデルを脱却し、管理者が即座に脆弱性修正を適用できる構造を構築した。これにより、サイバー攻撃の初動対応時間を圧縮し、リスク低減に寄与する姿勢が明確になった。
加えて、予告なく訪れるゼロデイ攻撃やランサムウェアへの備えとしても、ホットパッチの導入は実務上極めて有効と見なせる。
適用を先延ばしにせざるを得なかった過去の構造に比して、即時性を重視したセキュリティ体制は、特に中堅規模のIT部門にとって運用負荷を軽減する契機となる可能性がある。一方で、パッチ適用後の検証や不具合検知に再起動を利用していた従来運用の見直しは不可避であり、導入には一定の移行コストも伴う。
Microsoftがプレビュー版を無償で公開している点からは、導入障壁の低下と市場への段階的浸透を図る意図も透けて見える。ホットパッチが企業のパッチ運用戦略の中核を担うかどうかは、コスト対効果の見極めとともに、可用性とセキュリティのバランスに対する各社の姿勢が問われる局面となるだろう。
Source:HotHardware