2009年6月にリリースされたWindows 7において、単色背景を設定したユーザーに限ってログオン画面の表示が異常に長引くという不具合が発生していた。この現象は、デスクトップ壁紙の読み込み完了報告をOS側が待機する設計仕様に起因しており、ビットマップ画像を用いない設定では報告が行われないため、最大30秒間のタイムアウトが発生していた。

この問題は、Microsoftのエンジニアであるレイモンド・チェン氏によって後年ブログで明らかにされ、修正までに約4か月を要した経緯も併せて紹介された。背景の見た目によって起動速度に影響が出るという事実は、当時の設計思想やユーザー行動との非整合を露呈する象徴的な事例といえる。

さらに同氏は、壁紙非表示やアイコン非表示を好む一部ユーザーも同様の遅延に直面していた可能性があると述べており、UI設定の選択が性能に影響を与えうるという教訓を含んでいる。

単色壁紙がもたらしたWindows 7の設計上の盲点

2009年に登場したWindows 7では、デスクトップ背景に単色を設定すると起動時のログオン処理が遅延するという異例の不具合が確認されていた。

Microsoftのレイモンド・チェン氏によれば、この現象の原因は、ログオンシステムがデスクトップ壁紙ビットマップの読み込み完了を待機する設計にあり、ビットマップ画像が存在しない場合、その報告が実行されず処理が停滞してしまうという仕様に起因していた。最大で30秒に及ぶ「ようこそ」画面の停滞は、ユーザーに不信感と混乱を与える要因となった。

この問題はWindows 7の初期リリースから約4か月後に修正されたが、リリース段階での検証不足やユーザー設定の多様性への配慮の欠如が浮き彫りになったといえる。

背景画像の有無がOS起動時間に影響を及ぼすという構造的問題は、設計思想そのものに内在する矛盾を示唆するものである。単純な構成を選んだユーザーが不利益を被るという逆説的な状況は、設計と運用の乖離を象徴する事例として記録されるべきである。

レガシーな設計思想とUI最適化の課題

Windows 95の時代から単色背景を愛用してきたチェン氏のような技術者にとって、壁紙を使わない選択は単なる美的感覚にとどまらず、ハードウェア負荷軽減や動作最適化といった実利的な動機にも基づいていた。

特にSSDが普及する以前の環境では、RAMとHDDにかかる負荷を意識した設定が日常的に行われていた背景がある。しかしながら、Windows 7におけるこの事例は、見かけ上の軽量化がシステムの動作を逆に阻害するという非直感的な結果を招いた点が重要である。

アイコンを非表示にするなど、視覚的なシンプルさを追求するユーザーが同様の遅延の影響を受ける構造が存在していたことも示唆されており、OS設計においてユーザーの行動特性が十分に考慮されていたとは言い難い。

これはUI設定の柔軟性とシステム挙動の一貫性の両立が、いかに高度なバランスを要するかを示す好例である。利用者の自由な選択が予期せぬペナルティを生む設計は、UIとUXの本質的な再定義を迫るものである。

Source:Tom’s Hardware