米Bloombergによると、イーロン・マスクの資産は2025年1月以降、約1130億ドル(約17兆円)減少し、全体の25%を失った。背景には、トランプ政権下で特別政府職員として政府改革に深く関与したことがある。DOGE計画の顔として官僚機構を揺るがす中、テスラは売上不振と抗議活動に晒され、株価は33%下落、約4483億ドルもの時価総額を失った。

一方で、SpaceXやX(旧Twitter)は政権の支援を受け成長。特にSpaceXは国防総省から59億ドルの契約を得るなど恩恵を受けている。しかし、世論調査ではマスクの支持率は大きく低下。政界介入の代償として、マスクは企業価値と社会的信頼の両方を損ないつつある。

テスラ株急落と世論反発がマスクの資産に直撃

2025年1月のトランプ再登板とともに、イーロン・マスクが特別政府職員として政界に進出したことが大きな波紋を呼んでいる。特に、DOGE(政府支出削減計画)を先導する立場としての活動が公的機関の再編を加速させ、結果として広範な混乱を招いた。テスラはその象徴的な存在として標的となり、売上不振やサイバートラックへの破壊行為が相次いだことで、株価は33%下落。時価総額は4483億ドルもの損失を被った。ブルームバーグ・ビリオネア・インデックスによれば、マスクの個人資産は1130億ドル減少し、25%の目減りとなっている。

一連の動きに対して、ブルッキングス研究所のエレイン・カマーク氏は「100日間の破壊」と断じ、改革の名の下に切り込んだ政策が政府機構の本質部分を傷つけていると警鐘を鳴らした。世論調査では、マスクの政治的役割に対する否定的評価が過半数を占めており、以前よりも強い不信感が示されている。これらの事実が示唆するのは、マスクの影響力が政界に及んだことで逆風が増し、テスラという企業と個人の財産基盤に深刻な影響を与えたという構図である。

SpaceXとXは政権との接近で恩恵を享受

一方で、マスクが所有する他の企業、特にSpaceXとX(旧Twitter)は、政権との緊密な関係により経済的な恩恵を享受してきた。SpaceXは国防総省から59億ドルの大型契約を受注し、また連邦の42億ドル規模の通信インフラ拡充計画においても優位な立場を得ている。加えて、XはAIスタートアップXAIを通じて再評価が進み、買収時の評価額に近い水準で投資家の再参入が見られた。2025年には広告収益の回復も見込まれており、政界進出の副産物としての成果が鮮明である。

マスクは政権内部にシリコンバレー関係者を送り込み、連邦航空局や国防総省への影響力を強化。自らペンタゴンに出向いて大統領専用機の進捗を確認する場面もあった。これらの動きは、単なる企業家の域を超えて国家事業に深く入り込む姿勢を象徴している。ただし、その過度な接近は民主党系からの反発を招き、政界内での立場も次第に揺らいできた。政界との結びつきが双刃の剣となることを示唆する事例と言える。

政治的影響力の拡大とリスクの表裏

2025年のウィスコンシン州最高裁判所選では、マスクが2000万ドルを投じて共和党候補を支援したものの、結果は10ポイント差で敗北。この結果を受け、元トランプ首席戦略官のスティーブ・バノンは「警鐘が鳴った」と指摘した。また、政権内でも対立が表面化しており、通商政策を巡って大統領顧問のピーター・ナヴァロと激しく対立。テスラ決算説明会では、トランプの関税政策が自社に悪影響を及ぼしていると公然と批判した。

こうした対立は、単なる政権内の意見の不一致にとどまらず、マスクが政権の顔であると同時に、企業の経営者でもあるという二重性に起因する。政策が企業業績に直結する構造は、マスク自身の言葉で「政府に費やす時間は5月から大きく減る」とされるほどの重圧となった。トランプは最近のコメントでマスクの貢献を「過去形」で語っており、政界におけるマスクの役割が終焉に向かいつつあることを暗示している。

Source:msn