パンデミック期に急騰後、Twilio(ティウィリオ)の株価は下落基調にあるが、5月1日の決算発表が転機となる可能性が注目されている。2024年は売上7%増、調整後利益50%増を記録し、フリーキャッシュフローは6億5,770万ドル、保有現金も23億ドル超と堅調である。

SingtelやCedarとの提携を通じたAIおよびRCS通信の展開が成長ドライバーとなる一方、アナリストの評価は“やや買い”に留まり、収益モデルの不安定さやRCS市場の未成熟さに対する懸念も根強い。目標株価は平均127.72ドルで、現在価格から33%の上昇余地があるが、モメンタム株とは異なる性格を持つ銘柄であることから、投資判断は中長期視点を要する。

売上成長とコスト管理による財務回復の進展

Twilioは、2024年通年で売上を前年比7%増の44億6,000万ドルとし、第4四半期単体では11%増の11億9,000万ドルを達成した。これはコンセンサス予想を上回る結果であり、成長鈍化が懸念される中でのプラス材料である。

加えて、同年の調整後利益は前年から50%増の3.67ドルとなり、営業効率の改善を示している。特筆すべきはキャッシュ創出能力で、第4四半期に9,350万ドル、通年では6億5,770万ドルのフリーキャッシュフローを確保。加えて、2024年末時点での現金および短期投資残高は23億8,000万ドルに達しており、財務体質の健全性が際立っている。

これらの実績は、Twilioがコスト最適化と収益性重視の方針へとビジネスモデルを転換しつつある証左である。従来の高成長・高支出路線からの転換により、マーケットの評価軸も「成長性」から「利益体質」へと移行しつつあると考えられる。ただし、この戦略が市場のモメンタム投資家にどの程度訴求するかは不透明であり、財務健全化が直ちに株価反発につながるかは限定的である可能性がある。

通信APIを基盤としたグローバル戦略とAI応用の実装

TwilioはSaaS型の通信APIを通じて、企業が複雑な通信基盤を構築せずにアプリやウェブサイトへ通信機能を導入できる仕組みを提供している。この仕組みは多くの業種で活用されており、結果としてTwilioは多業種の通信インフラを担う中核的存在となっている。2014年には売上8,880万ドルだったが、2024年には44億6,000万ドルと10年で5倍以上に拡大。加えて、Segmentの買収やAI機能強化を通じて、リアルタイムデータ活用やカスタマーエンゲージメントの高度化にも注力してきた。

近年では、医療分野でのCedar社との提携により、AIを活用した患者向け請求システムの改善を進めているほか、シンガポールのSingtel社と連携し、安全かつブランド管理が可能なRCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)のグローバル展開を推進。これらの施策は、Twilioの成長領域が単なるメッセージAPIからAI対応型のエンタープライズ向け統合コミュニケーション基盤へと進化していることを示唆する。ただし、RCS市場は未だ発展途上にあり、その商業的成果が見えるには時間を要する可能性もある。

アナリスト評価は慎重姿勢を維持 短期投資には向かない構造

Twilioに対するウォール街の評価は分かれており、25名のアナリストのうち“Strong Buy”が15名と最も多い一方で、“Hold”と“Sell”の評価も7名にのぼる。特にStifel NicolausのJ. Parker Lane氏やTD CowenのDerrick Wood氏は「保留(Hold)」を継続しつつも、RCS市場の成熟度や使用量ベースの課金モデルが経済変動に対して脆弱である点を懸念材料として挙げている。加えて、Jefferies、Scotiabank、Oppenheimer、Wells Fargoといった複数の大手が目標株価を引き下げており、市場は慎重姿勢を崩していない。

現在のTwilio株は、2025年予想利益に対してPER21倍で取引されており、数値上は割安感もある。ただし、この評価は今後のAI事業やRCS展開が想定どおりに進行することを前提としており、実現可能性の不確実性は依然として存在する。平均目標株価127.72ドルに対し、現時点での株価は約33%の上昇余地を残しているが、短期的な反発よりも、中長期的な構造転換と戦略の実行力に対する評価が鍵を握るといえる。

Source: Barchart