2025年4月時点で、S&P500構成銘柄のうち最も大きく下落したのはDeckers Outdoor(46%下落)、Teradyne(39%下落)、ON Semiconductor(38%下落)である。これらの銘柄はいずれも米中関係の緊張や関税、半導体市況の鈍化、成長分野の停滞といった複合的な要因で売り込まれており、市場全体の弱気ムードを象徴している。

一方で、アナリストの多くは依然としてこれらの企業に対して強気の評価を維持しており、平均目標株価はいずれも現在値を大きく上回っている。ファンダメンタルズの強さや回復余地を踏まえると、短期的な調整局面を越えた先に再評価の余地があるとの見方も一定数存在するが、各社が直面する構造的リスクや不透明なマクロ環境を無視することはできない。

Deckers Outdoorに対する市場の誤解と構造的懸念

Deckers OutdoorはUGGやHokaなどの人気ブランドを擁し、アパレル業界において一定のブランド力を有するにもかかわらず、2025年に入ってからの株価下落率はS&P500構成銘柄中で最も大きく、約46%に達している。

第3四半期の決算では一定の業績改善が示されたものの、通年の業績見通しが市場の期待を下回ったこと、さらにトランプ政権による高関税政策の影響が懸念され、株価は急落した。特に同社は製造の多くを中国およびベトナムに依存しており、関税によるコスト上昇リスクが浮き彫りとなっている。

しかし、アナリストの間では同社のファンダメンタルズに対する評価はおおむね強気である。TipRanksによれば、12人が買い推奨を出しており、Raymond Jamesのリック・パテルも「ストロングバイ」へ格上げした。健全なバランスシートとフリーキャッシュフローの堅調さは、短期的な売り圧力の中でも再評価される余地があるとの評価につながっている。とはいえ、関税が長期的に続いた場合、収益構造への影響は避けられない。現状の評価上昇期待には、関税政策の動向が大きく影響する可能性が高いと見られる。

Teradyneの成長鈍化と半導体設備投資の逆風

自動テスト装置とロボティクス技術を強みに持つTeradyneは、QualcommやSamsung、Texas Instrumentsといった大手半導体メーカーを顧客に抱える技術基盤の強固な企業である。にもかかわらず、株価は年初から39%下落し、S&P500のワースト銘柄の一角を占める。半導体業界における設備投資の停滞が同社の業績見通しに暗雲を投げかけており、特に韓国、台湾、中国といったアジア市場への依存度の高さが、米中摩擦の悪化と関税の影響でリスク要因となっている。

3月のアナリスト・デーでは第1四半期の業績見通しは維持されたものの、第2四半期には最大10%の売上減少が示唆され、通期への懸念が拡大している。アナリストの評価はおおむね好意的で、過去3カ月で17人中13人が買いを継続しているが、PERは23倍と過去平均を下回る水準に落ち込んでおり、市場の慎重姿勢を示している。今後、AIや次世代半導体の需要が回復した際には業績反転の可能性もあるが、短期的には政治的・地政学的リスクの影響を無視できない局面にある。

ON SemiconductorのEV依存と戦略再構築の課題

ON Semiconductorは電気自動車(EV)やハイブリッド車向けチップで一定の市場シェアを持つが、2025年に入り株価は38%の下落を記録している。2024年の業績は売上・利益ともに減速しており、成長ドライバーであったEVおよび産業分野の伸びが鈍化していることが大きな要因である。

さらに、同社はAllegro Microsystemsの69億ドル規模の買収を目指していたが、規制当局の反対を受けて計画は白紙撤回となった。これにより、自動車・産業領域の強化戦略にも遅れが生じている。

アナリストの評価は分かれており、24人中15人が買い、8人が保有、1人が売りと見ているものの、B. Rileyのクレイグ・エリスは見通し不透明感を理由に評価を引き下げた。PERは16倍と過去平均を下回る水準にあるが、EV市場の中長期的な成長性には依然として不確実性が残る。

特に、米政権によるEVインセンティブの縮小が追い風から逆風へと変わりつつある中、ON Semiconductorがどのように収益構造を転換し、戦略を再構築するかが今後の焦点となる。投資判断には依然として慎重な視座が求められる。

Source: The Motley Fool