エバコアISIのインターネット調査責任者マーク・マハニー氏は、アマゾンが直面する米中関税問題について「価格転嫁を回避すれば利益率が圧迫され、市場シェアを守れば収益性が低下する」と分析した。現在アマゾン株は年初来で14.9%下落しており、次回決算を前に投資家の警戒感が高まっている。
同氏はまた、関税の影響で商品価格が3割上昇すれば、アマゾンの幅広い顧客層に需要後退が波及する可能性にも言及。特に中間所得層以下の購買行動に大きな打撃を与えると予測する。それでも同社はAIとインフラへの年間1000億ドル規模の投資方針を維持する構えで、短期的な利益圧力を受け入れる覚悟が示されている。グローバルな経済不安と政策リスクが交錯する中、アマゾンの戦略的な舵取りが注視されている。
アマゾンの収益構造に関税が突きつける二者択一

エバコアISIのマーク・マハニー氏は、米中関税の高騰がアマゾンにとって「利益率の維持」か「市場シェアの確保」かという厳しい選択を強いると指摘する。特にここ数四半期、アマゾンはコスト削減や効率化により収益性を大きく改善してきたが、その成果は関税負担によって一気に帳消しとなる可能性がある。加えて、アマゾンは政治的対立を回避してきた企業であるにもかかわらず、関税という経済的な実弾にさらされる格好となり、企業戦略の再設計が求められている。
アマゾンが価格転嫁を選べば消費者離れが進み、結果的に競合他社にシェアを奪われる恐れがある。一方でコストを自社で吸収すれば利益圧迫は避けられず、株主の不満を招きかねない。2024年以降、株価上昇をけん引してきたのは改善した営業利益率にあったが、ここにきてその前提条件が大きく揺らいでいる。
現時点でアマゾンは、1000億ドル超のAIおよびインフラ投資計画を継続する姿勢を崩しておらず、長期的視野に立った成長志向を維持している。ただし、マージンの圧縮が長期化すれば、投資余力にも影響を及ぼす可能性があるため、次回決算における経営陣の判断と説明責任が極めて重要となる。
価格上昇による需要後退リスクと顧客層の脆弱性
関税に伴う価格上昇がアマゾンの広範な顧客基盤にどのような影響を与えるかが注目されている。マハニー氏によれば、もし商品価格が平均で30%上昇すれば、アマゾンの低所得から中所得層のユーザーが真っ先に購買力を失うとされる。旅行や娯楽など裁量支出に依存する企業とは異なり、アマゾンは生活必需品から高額商品までをカバーしているため、影響の波及範囲が広いことがリスクの根源である。
実際、アマゾンは特定の層に特化せず、あらゆる所得層を対象としてきたため、全体的な消費心理の悪化は直撃を受けやすい。これは、従来の強みであった「誰でも使えるプラットフォーム」が、同時に経済変動の直撃を受けやすい構造であることを意味する。特に消費者が価格に対して敏感になれば、安価な代替サービスや競合他社への移行が加速するおそれがある。
したがって、関税の影響は単なる原価上昇にとどまらず、アマゾンのブランドロイヤルティや価格競争力そのものを揺るがす展開にもなりかねない。今後の需要動向を見極めるうえで、価格設定とプロモーション戦略がカギを握ることになる。次回の業績発表では、顧客行動の変化をどう捉えたかが明確に問われる局面にある。
Source:msn