2024年に歴史的な上昇を記録した米国株式市場は、2025年第1四半期に入ると一転して急落し、NASDAQは10.42%、S&P500は4.59%、DJIAは1.28%の下落を記録した。4月7日には三指数が軒並み年初来安値を付け、VIXは60.13と過去30年で5番目の水準にまで急騰。トランプ政権の貿易政策が市場の懸念材料となり、特に関税交渉の行方が今後の株価の方向性を左右する見通しである。

現在、株式市場は4月下旬にかけて一部反発の兆しを見せているが、景気減速懸念や高止まりする長期金利、利下げに慎重なFRBのスタンスが重しとなり、短中期的には弱気トレンドが続く可能性がある。一方で、減税政策の議会通過やインフレ率の鈍化が現実化すれば、強気相場の再開に繋がる契機となる可能性も残されている。

株式市場を襲った急激な下落とVIXの異常な上昇

2024年末にかけて米国の主要株価指数は力強い上昇を遂げ、S&P500が23.31%、NASDAQが28.64%、DJIAが12.88%の上昇率を記録したが、その後の2025年第1四半期には流れが一変した。特に4月7日は市場の転換点となり、S&P500は4,835.04、NASDAQは14,794.45、DJIAは36,611.78までそれぞれ急落し、いずれも第1四半期末比で12%を超える下落幅を記録した。これに呼応するかたちで、S&P500オプションのインプライド・ボラティリティを表すVIX指数は一時60.13に達し、1990年以降で5番目の高水準となった。

この急激な変動の背景には、トランプ政権が再登場したことで高まった政策不確実性があると見られる。特に「解放の日」以降に表明された保護主義的な通商政策が市場に対する警戒感を引き起こし、投資家心理を急速に冷え込ませた。加えて、FRBが金利引き下げを見送ったことも、株式の相対的魅力を低下させる要因となっている。ボラティリティの異常な上昇は、市場参加者の不安心理の高さを端的に示しており、短期的な安定は容易ではない状況にある。

もっとも、VIXはその後26台にまで落ち着きを取り戻しており、一部では自律的反発の兆しも見られる。ただし、依然として高止まりした状態が続いており、いかなる好材料も投資家に対する説得力を持たない限り、下落リスクの再燃は排除できない。市場の先行きは極めて神経質な状態が続いている。

関税交渉と政策期待が左右する株価回復の行方

4月下旬時点で、米国株式市場は4月7日の安値からは反発したものの、第1四半期末の水準は依然として回復しておらず、調整局面の只中にある。トランプ政権が進める通商政策、とりわけ中国との対立を含む関税強化の可能性が、企業収益や消費活動への圧力として市場に重くのしかかっている。市場関係者は、今後数週間の貿易交渉の推移を注視しており、合意形成の有無が株価トレンドに大きく影響する展開となる。

一方で、インフレ率がFRBの目標値に近づきつつあるとの見方も根強く、金融政策の転換が視野に入れば、リスク資産への資金回帰が加速する可能性もある。また、5月末までに議会を通過する可能性のある減税策は、企業の設備投資や雇用拡大を促し、株式市場に対する支援材料として作用し得る。ただし、これらの政策が市場に好感されるか否かは、具体的な設計内容とその実行力に依存しており、期待先行の段階で過度な楽観は禁物である。

現在の相場は、下落幅の大きさに比して反発の勢いが限定的であり、投資家の多くが依然として慎重な姿勢を崩していない。短期的には外部要因への脆弱性が残存し、中期的な視点では政策の方向性が市場の回復力を決定づける鍵となる。株価が本格的な上昇軌道を取り戻すには、政策的不透明感の払拭と実体経済の回復が両立する必要がある。

Source:Barchart.com