アップルのAI戦略が市場の期待に見合わず、同社株のプレミアム評価に対する懸念が浮上している。モルガン・スタンレーのアナリスト、エリック・ウッドリング氏は、iPhoneの価格上昇が販売量と利益率に悪影響を及ぼす可能性に言及。

第2四半期は売上高の伸びが1桁台半ばにとどまる見通しで、AI機能を搭載した新型iPhone16の販売も前年同期を下回った。さらに、強いドルの影響で次期売上は2.5%押し下げられる見込み。AI関連銘柄としての注目度は高いが、PER39倍という高水準の株価評価が正当化されるかは不透明な状況である。

iPhoneのAI進化と販売停滞が示す成長戦略の限界

Appleが2024年9月に投入したiPhone 16は、Apple Intelligenceと呼ばれる独自AI機能を初めて搭載し、同社のAI戦略の転換点とされた。しかし販売開始直後の10月から11月にかけて、iPhone 15の同時期販売実績を下回る結果となり、市場の反応は想定を下回った。Columbia Seligman Global Technology Fundは、AI機能が旧モデルと互換性がなかったことが、販売不振の一因だと分析している。また、OpenAIとの連携によりChatGPTを導入した点も注目されたが、これはApple Intelligenceとは別の機能として扱われ、消費者にとって分かりにくい仕様となった可能性もある。

加えて、AI機能が日常利用にどこまで有効かという実用面での評価が定まっていないことが、買い替え意欲に結びついていない背景にある。iPhone 17ではさらに拡張されたAI機能が搭載される予定だが、これが大規模なアップグレード需要につながるかは不透明である。Appleが提示するAI搭載モデルの成長ストーリーは現段階では説得力に乏しく、単一製品への依存度が高い事業構造のリスクも浮き彫りとなっている。

関税とドル高が圧迫する業績見通しと収益性

モルガン・スタンレーのエリック・ウッドリング氏は、Appleに対する新たな関税措置が製品価格の上昇圧力となり、結果として販売数量および利益率の双方に影響を及ぼす可能性があると指摘した。特にiPhoneの価格が上昇すれば、需要の減退と収益圧縮が同時に発生するリスクが高まる。さらに、現在の為替動向により米ドルが強含む状況が続いており、これにより2025年第2四半期の売上高が約2.5%押し下げられると見込まれている。

Appleは次期決算で売上高の成長率を「1桁台前半から中盤」としており、これは過去数年と比較しても控えめな予想にとどまる。AI戦略やサービス収入など成長ドライバーの存在は評価されているものの、外的要因による利益圧縮の影響は避けがたい。現状の構造では、マクロ環境の変動に対する耐性が限定的であり、AI技術の投入だけでは収益安定化には直結しにくいことが示唆される。これにより、プレミアムバリュエーションを維持する根拠の一部が薄れつつある。

高水準の株価評価と投資妙味の再考

Appleの株式は現在、PERが39倍、フリーキャッシュフロー倍率が34倍、PEGレシオが3倍超と、歴史的にも高い水準で取引されている。これはAIへの期待とブランド力を織り込んだ評価ではあるが、現実の成長率や収益構造を鑑みると、持続性に疑念が生じ始めている。Insider Monkeyによると、Appleは「AI株注目リスト」の第4位に位置づけられているが、他の未発掘AI企業の中には、2025年に入り25%以上の上昇を見せた例もあり、相対的な投資妙味の低下が浮き彫りとなっている。

また、158のヘッジファンドがApple株を保有している事実は支持の広がりを示すが、それが新たな成長余地を意味するとは限らない。Appleのように規模が巨大な企業は、イノベーションの速度や株価の変動余地が限定されがちである。AI市場の成熟が進む中で、収益に直結する新技術の導入が遅れれば、投資家の関心はより機動力の高い銘柄へと移行する可能性がある。過去の実績に基づく過信は、今後の市場で冷静な見極めを妨げる要因となろう。

Source:yahoo finance