ARK Innovation ETFを率いるキャシー・ウッドは、トランプ政権の関税強化で市場が大きく揺れる中でも、Nvidia、AMD、Coinbaseといった成長株への投資を加速させた。ARKKは一時40%近く下落したが、直近では26%以上反発しており、彼女はこの混乱を長期的な買い場と捉えている。
特にAIや暗号資産分野を支える銘柄に注目しており、高ボラティリティの中で押し目買いを続ける姿勢を崩していない。市場の短期的混乱が続く可能性はあるが、成長志向の投資家にとっては今が転換点となる可能性も残されている。
ARKKが直面した下落と回復の軌跡

ARK Innovation ETF(ARKK)は、トランプ前政権による関税政策の強化を背景に、2025年初頭にかけて大幅な調整局面を迎えた。特にテック株への過度な依存構造が影響し、ARKKは一時40%近い下落を記録した。だが直近では、同ETFは40ドル付近の底値から26%以上回復しており、短期的な投資家心理の改善が見て取れる。とはいえ、関税による供給網の混乱やインフレ圧力が依然として残る中、今後の回復ペースには不透明感がつきまとう。
注目すべきは、こうした急落局面においてもARKKがポジションを縮小せず、むしろ買い増しに転じた点にある。ウッド氏は、市場の悲観がピークに達したタイミングを長期投資家にとっての好機と捉えているとされる。ただしこの戦略は、短期的な痛みに耐えられる投資家に限られる。指数の変動性を示すベータ値が2.04という高水準にあることは、ARKKの値動きがS&P500の2倍以上に達することを意味している。
このようにARKKは、高成長銘柄の恩恵を享受できる一方で、マクロ要因の変化に過敏な側面も併せ持つ。その点で、成長志向かつリスク許容度の高い投資家にとっては、現在の市場環境は再び仕込みのタイミングと映る可能性がある。
ウッドが選んだ3銘柄の共通項と投資意図
今回ウッド氏が買い増しに動いたのは、Nvidia(NVDA)、AMD(AMD)、Coinbase(COIN)という高成長領域に位置する3社である。いずれもAIやブロックチェーンといった技術革新を背景に、長期的な成長期待を集めてきたが、関税リスクや市場全体の弱気トレンドにより、株価は一時的に軟化していた。特に注目すべきは、それぞれの予想株価収益率(P/E)が25.3倍、21.7倍、27.4倍と、相場環境を踏まえると割安感も出始めていた点である。
ウッド氏は、過去にも「落ちるナイフ」を拾うような投資を繰り返してきたが、それが奏功するか否かは市場の反転時期に依存する。関税撤廃がなければ企業業績が再び圧迫されるリスクもあるため、現在の買い増しが中長期の成果につながるかは慎重に見極める必要がある。ただ、テクノロジー分野が引き続き構造的成長を遂げるとの前提に立つならば、こうした局面こそが本質的な「押し目」であるという解釈も成り立つ。
3銘柄に共通するのは、市場の悲観が織り込まれつつありながらも、根本的な事業ドライバーに陰りが見られないことである。そうした企業群に集中投資する姿勢こそ、ウッドの一貫した投資哲学の体現であると考えられる。
リスク許容度によって分かれる投資家の選択肢
現在のARKKやその中核銘柄に投資するか否かは、各投資家のリスク許容度によって大きく分かれる。若年層や長期的視点を持つ投資家にとっては、AIや暗号通貨といった成長領域に張る戦略は有効な選択肢となり得る。実際、NvidiaやCoinbaseといった銘柄は、トレンドそのものが市場を牽引する力を持ち、反転局面では一気に上昇に転じる可能性を秘めている。
一方で、すでに退職後の生活を前提とする層や、リスク回避を重視する層にとっては、ARKKのような高ベータ商品は適さない選択肢とも言える。トランプ政権が関税路線を維持する場合、さらなる市場の混乱は避けられず、防御的なセクターへの資産シフトが現実的な対応策となる。
したがって、キャシー・ウッドの戦略を模倣することが万人にとって有効とは限らない。市場が不透明な局面では、単なる著名投資家の動向を追随するのではなく、自身の資産配分や投資期間を踏まえた選択が不可欠である。未来を見据えつつも、現在の足元を冷静に見極める姿勢が求められる局面である。
Source:24/7 Wall St.