Meta、Spotify、Match Groupなどの大手企業が支援する新たなロビー団体が、未成年ユーザーの年齢確認責任をアプリストア運営者であるAppleおよびGoogleに移すべきだと主張している。背景には、親や議員によるSNS利用への規制強化の動きと、年齢確認の不備による懸念の高まりがある。
AppleとGoogleは、責任はアプリ開発者側にあるとの立場を崩していないが、法整備の進展次第ではその構図が揺らぐ可能性もある。ユタ州やノースカロライナ州をはじめとする州レベルでの立法が進む中、この議論は今後、連邦レベルの法案提出にも波及する見通しである。
AppleとGoogleへの責任転嫁を巡る攻防の構図

MetaやSpotify、Match Groupらが支援するロビー団体「Coalition for a Competitive Mobile Experience」が、AppleおよびGoogleに対してアプリ利用時の年齢確認責任を課すべきだとする主張を展開している。背景には、18歳未満の若年層に対するSNSやオンラインサービス利用制限の強化を求める世論の高まりがある。
現在、アプリ提供者が利用者の年齢確認を担う構造となっているが、団体側は「アプリの入り口に立つアプリストア運営者こそが確認すべき存在である」としている。一方、AppleとGoogleは、データ管理とユーザー認証を行うのは開発者であり、プライバシー保護の観点からも責任の転嫁には応じられないと反論している。
この議論の根底には、法的責任の所在にとどまらず、プラットフォームの支配力に対する構造的な不満も見え隠れする。アプリストアの運営方針が市場競争を制限しているとの指摘は過去からあり、今回の動きは年齢確認問題を契機とした規制再編の一環と見る向きもある。
仮に法整備によってストア側が責任を負うこととなれば、アプリ配信の設計思想そのものに変化が迫られることになる。
子ども保護を巡る法制度の未整備とその影響
米国内では、未成年者のインターネット利用を制限する動きが州レベルで進行している。ユタ州は2025年3月にアプリストアに年齢確認を義務付ける法律を初めて可決し、政府発行の身分証による18歳以上の証明が求められるようになった。
Pornhubなど一部のポルノサイトはこれに対応して州内でのアクセスを遮断する措置を講じた。また、ノースカロライナ州では16歳未満のユーザーを対象とした法案が提出されているが、確認の方法や責任主体は明示されておらず、運用上の曖昧さが残る。
これらの動きは、未成年のオンライン安全確保という目的に照らせば意義があるが、一方で個人情報保護や自由なアクセス環境とのバランスが課題となる。誰がどの段階で確認を担うかによって、企業側の運用負担も大きく異なる。
とりわけグローバルに展開するサービスにとって、州ごとの規制の違いは実務上の混乱を招く要因となりかねない。今後、連邦レベルでの法整備が進むか否かが、技術企業の対応方針に大きく影響を及ぼすだろう。
データプライバシーと技術的限界が突きつける現実
MetaはAIによるティーンエイジャー識別機能を導入し、OpenAIも親の同意を前提とする年齢制限を設けているが、実際の運用は自己申告制に依存しており、抜け道は多い。年齢確認技術の高度化が進まぬ限り、実効性のある保護措置とはなりえず、現行の枠組みでは制度と技術の乖離が深刻化している。
また、AppleやGoogleに責任を移した場合でも、ユーザー認証の精度やプライバシー管理の在り方が大きな論点となる。一律に年齢確認を強化すれば、匿名性や自由な表現空間が損なわれる懸念もある。とくに表現の自由を重視する文化圏では、過度な規制が逆効果を招く可能性も否定できない。
プライバシー保護と年齢確認という二律背反的な要請に対して、どのような折衷案が社会的に受容されるかは見通しが立たない。技術的な解決策が未成熟な今、拙速な制度移行は混乱を助長する恐れがある。各社の対応と立法動向が交差する中、課題は一層複雑化している。
Source:Mashable