NVIDIAは、RTX 50シリーズにおいて多発していたグレースクリーンやゲームクラッシュ、GPUアイドル時の異常動作など深刻な不具合に対処すべく、WHQL認証済みのドライバー「バージョン576.28」を新たにリリースした。本バージョンは、ゲームパフォーマンスの向上ではなく、既存の問題修正に特化した異例の構成である。特に『Red Dead Redemption 2』『Horizon Forbidden West』『Resident Evil 4 Remake』など複数の人気タイトルでの動作安定性が改善され、DisplayPort 2.1やモダンスタンバイ対応ノートでも安定性が向上している。

今回の対応は、4月末に配信された不具合修正版576.02で生じた新たな問題の収束を図るものであり、ユーザー環境の信頼性確保が主眼に置かれている。ただし、『Cyberpunk 2077』『Ghost of Tsushima』といった一部タイトルでの問題は未解決のままとなっており、今後の追加対応が注視される。

ドライバー576.28が修正した不具合の全貌と対象ゲームの具体例

NVIDIAがリリースした「Game-Ready WHQLドライバー 576.28」は、RTX 50シリーズに特化して重大な不具合を修正する緊急的な対応として位置付けられている。グレースクリーンやフリーズ、GPUクロックの異常といったシステム全体に影響を及ぼす問題から、個別ゲームにおけるクラッシュや表示不具合まで、非常に多岐にわたる修正が行われていることが注目される。

特に『Black Myth』『Red Dead Redemption 2』『Horizon Forbidden West』『Dead Island 2』『Resident Evil 4 Remake』といった複数の人気AAAタイトルでは、起動直後のクラッシュやセーブデータ読込後のフリーズといった致命的なエラーが記録されていた。

また、Forzaシリーズではナイトレース中の照明のちらつきやトラックの破損が発生しており、ゲーミング体験の質に直結する不具合として深刻視されていた。これらはGRD 576.02アップデート以降に顕在化した事例も多く、ドライバーの品質管理とリリース後の迅速な対応体制が問われていた。NVIDIAは今回のアップデートで一連の問題を一括修正した形であり、RTX 50シリーズユーザーの信頼回復を強く意識した施策と読み取れる。

ただし、『Cyberpunk 2077』や『Ghost of Tsushima Director’s Cut』といったタイトルでは依然としてクラッシュや表示の乱れといった不具合が残存しており、今回の対応では完全解決には至っていない。特に高度なライティング処理やレイトレーシングを使用するタイトルにおける安定性が依然として課題であることは、次なるドライバー改善の優先領域として認識されるべきである。

RTX 50シリーズ特有の設計仕様と不具合発生の構造的背景

今回修正された不具合群の多くがRTX 50シリーズに集中していることは、単なるドライバー側の調整不足にとどまらず、アーキテクチャ固有の挙動が影響している可能性を示唆する。Blackwell世代とされるRTX 50シリーズでは、新たな電力制御設計やGPUクロックの動的最適化といった技術が導入されており、これが一部のゲームエンジンやマルチモニター環境との相互作用において、予期せぬ挙動を誘発している構図が読み取れる。

たとえば、アイドル時におけるGPUクロックの極端な低下や、DisplayPort 2.1接続時の画面表示不良、スリープ復帰時に温度情報が正しく表示されない問題などは、ハードウェアとソフトウェアの調整不足から生じる代表例である。加えて、RTX 50シリーズノートPCではモダンスタンバイとの互換性不良により、復帰時のブラックスクリーンといったトラブルが確認されており、携帯型GPUにおける消費電力管理とUI処理の難しさも浮き彫りとなっている。

このように、ドライバーの安定化においては、単純なバグ修正以上にハードウェアとの整合性検証が求められる段階に突入しており、NVIDIAのソフトウェアエンジニアリング体制全体の成熟が問われている。今後は初期段階での品質管理の徹底と、各アーキテクチャに最適化されたファームウェア連携の強化が急務となる。

Source:Neowin