Amazon.comの株価は2025年に入り下落基調が鮮明となり、年初来で15.9%、高値からは24%の下落を記録している。背景には、トランプ前政権による対中関税の再強化があり、これがAmazonの第三者販売者の収益構造を圧迫し、プライムデーへの不参加を招いている。小売部門の要であるこのセールイベントからの離脱は、同社のディール提供力と販売成長の足かせとなる懸念がある。
一方で、AWSやデジタル広告部門は依然として堅調に推移し、第4四半期決算も市場予想を上回る内容であった。今週発表予定の決算への期待は限定的だが、将来利益倍率や売上倍率は過去平均を下回っており、バリュエーション面では魅力的との評価もある。アナリストの大多数は「強く買い」を継続しており、クラウドとAI領域への大型投資が長期的な成長ドライバーとして機能する可能性は否定できない。
プライムデーからの出品者離脱が象徴する構造的な利益圧縮

2025年のAmazonプライムデーにおいて、かつて同イベントを支えた多くのサードパーティ販売者が参加を見送る動きが顕在化している。これまで販売者は、大幅な割引と高い販売量を前提に収益を確保していたが、近年の関税引き上げがその構図を崩壊させた。
特に中国製商品の依存度が高い販売者にとって、トランプ前大統領による対中関税再導入は仕入れ価格の上昇をもたらし、割引余力を大きく制限している。Amazonにとっては販売者ネットワークが商品の豊富さと価格競争力の源泉であり、その離脱はセールの魅力自体を低下させる重大なリスクといえる。
また、販売者が値上げを回避しつつ利益を確保しようとするならば、出品そのものを控えるしかない状況に陥っており、Eコマースプラットフォームの供給面での歪みが拡大している。この動きはAmazonのリテール部門にとって単なる短期的なセールの不振に留まらず、構造的な収益性の低下を招く要因となり得る。これまでプライムデーは短期間に高回転で商品を捌くイベントとして、売上とブランド価値を同時に高める機能を果たしていたが、その意義が問われる局面に差し掛かっている。
今後も関税が継続するならば、特に中小規模の出品者はさらなる撤退を強いられる可能性がある。これによりAmazonは品揃えの多様性を欠くリスクに直面し、価格訴求力を低下させかねない。長期的な視点において、サードパーティ依存からの脱却あるいは新たな価格戦略の構築が避けられない情勢といえるだろう。
AWSとAI投資による多角化が支える株価評価の底堅さ
Amazonは2025年に入り株価が下落基調にあるものの、アナリストの評価は依然として強気を維持している。その根拠の一つが、Amazon Web Services(AWS)とデジタル広告部門を中心とした高利益率事業の堅調な成長にある。第4四半期において、AWSの売上は前年比19%増の288億ドル、広告収益も同18%増の173億ドルに達し、グループ全体の営業利益を支える主要エンジンとなっている。また、382億ドルのフリーキャッシュフローや788億ドルの現金等価物など、財務基盤の強さも投資家の安心材料となっている。
さらに注目されるのは、Amazonが今後1000億ドル規模でAI分野に投資を進める方針を明示している点である。この先進技術分野への本格参入は、AWSを起点としたクラウド基盤との相乗効果を生み出す可能性があり、デジタルインフラ全体の競争力を一層高めると見られている。こうした展開は小売部門のマージン低下を補完し、企業全体としての成長力を支える枠組みとなりつつある。
アナリスト52名中46名が「強く買い」と評価し、平均目標株価は246.43ドルと、現在の水準から33.6%の上昇余地が示されている。もちろん、関税による短期的なリスクは存在するが、それらが直ちに構造的な下落圧力に転化するとは限らない。Amazonが持つ事業の多様性と資本投下余力は、逆風下でも成長戦略を維持する土台となっており、株価の下支え要因として機能することが期待されている。
Source:Barchart