アマゾンがグローバルなデータセンター拡張計画を一時的に停止し、AWSの成長鈍化が懸念されるなか、投資家の視線は別の不動産投資信託(REIT)であるアメリカンタワー(AMT)に集まっている。AMTは2025年に入ってから約22%の株価上昇を記録し、堅調な配当利回りと不動産収益の拡大を背景に、ウォール街で「強気の買い」が多数派を占める。
一方で、アマゾンの動きは戦略的な後退ではなく、過去の急激なリース拡大の整理段階との見方もあり、業界全体としてのハイパースケール成長の減速傾向に対する見極めが求められる。短期的な懸念と中長期の構造成長の交錯が、投資判断を一層複雑にしている。
アマゾンのAWS拡張一時停止が示唆するハイパースケール市場の変調

2025年4月、ウェルズ・ファーゴがアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータセンターリース活動の一部停止を報告したことを受けて、アマゾン株は一時的に3%以上下落した。この措置は、急速に拡張していたAWSが過去のリース契約を整理している段階であるとの認識が広がっている。
アナリストのエリック・リューブショウ氏は、この一時停止は構造的な縮小ではなく、リース契約の吸収を目的とした一時的な調整にすぎないと述べた。この説明は、マイクロソフトにも見られた同様の減速傾向とも重なる内容である。
しかし、ハイパースケール市場における建設ブームの過熱感が沈静化しつつあるとの見方も投資家の間で広がっており、今回の動きは単なる供給調整を超えた意味合いを持つ可能性がある。とりわけ、AIやクラウドサービスの継続的な拡大を前提にした設備投資のペースが鈍化すれば、成長モデル全体に影響を及ぼしかねない。
AWSが市場の需要変動にどのように対応していくかが、今後のデータセンター投資戦略の基準となることは間違いない。現時点では、供給過多に対する短期的な是正という見方が支配的であるが、中長期的に需要サイクルが減速する兆候と捉える声も無視できない状況である。
株価22%上昇のアメリカンタワー REIT市場で際立つ強さと利回り
アマゾンのデータセンター戦略が一時停止する一方、REIT市場ではアメリカンタワー(AMT)が際立った評価を得ている。2025年に入ってから同社の株価は約22%の上昇を記録しており、S&P500が年初来で6.3%下落していることを考慮すると、その強さは特筆に値する。American Towerは、世界で約14万9,000の通信施設を展開し、米国内では相互接続型データセンターのネットワークを保有するグローバルREITの代表格である。2025年第1四半期には総収益25億6,000万ドルを達成し、その97%を不動産部門が占めるなど、堅調なリース需要が業績を支えている。
さらに、3月に発表された1株あたり1.70ドルの四半期配当(年率換算6.80ドル)は、約3%の利回りを提供し、金利上昇局面でも安定した収益源としての信頼感を強めている。調整後運用資金(AFFO)こそ前年同期比でわずかに減少したが、1株あたりベースでは6.6%の増加を見せており、利益の質も確保されている。
市場では23人のアナリスト中17人が「強気の買い」を推奨しており、目標株価の平均は現在水準から5.3%の上昇余地があるとされる。アマゾンの投資停滞が市場に与える不安を背景に、安定性と成長性を兼ね備えたAMTの存在感は今後さらに強まる可能性がある。
Source:Barchart.com