テスラの取締役会会長ロビン・デンホルムが、昨年12月以降で総額1億5,000万ドル超に相当するTSLA株を段階的に売却しており、さらに112,000株(約3,200万ドル)の追加売却を米当局に届け出たことが明らかとなった。これにより、デンホルムが保有する同社株のほぼすべてが市場に放出される可能性が浮上している。

市場では、この一連の売却が事前計画された「105b-1取引」に基づくものであるにもかかわらず、内部情報による判断や取締役会退任の布石ではないかとの憶測が強まり、テスラ株は年初来高値から35%超の下落を記録している。

加えて、Redburn Atlanticは販売減速や税制優遇措置の撤回などを理由に、テスラ株が160ドルまで暴落する可能性を指摘。2025年後半に向けてモデルY刷新や廉価車投入も業績回復に直結しないとする見方が広がっており、投資家心理は急速に冷え込んでいる。

会長による1億5,000万ドル超の株式売却が示す市場への波紋

ロビン・デンホルム会長が昨年12月以降に売却したテスラ株は累計で1億5,000万ドルを超え、さらに3,200万ドル相当の112,000株について追加売却の届出を提出した。これは「SEC Rule 10b5-1計画」に基づく事前設定型の取引であるが、売却完了後には事実上、保有株の大半が市場に流出することになる。この行動は、インサイダーによる大規模な株式処分として投資家心理に影を落とし、テスラ株の35%超の下落に拍車をかけている。

特に問題視されているのは、売却のタイミングとテスラを取り巻くファンダメンタルズの悪化である。販売台数の減速、キャッシュフローの逼迫、IRA税控除の撤回懸念など、企業価値に対する逆風が強まる中、経営中枢にある人物が離脱の構えを見せることは、単なるポートフォリオ整理とは一線を画する。退任を見越した動きとの憶測も浮上し、コーポレート・ガバナンスに対する疑念も燻る。

一方、売却の正当性は形式上保証されており、規制当局の視点からは不正の証左は見当たらない。ただし、市場が受け取るメッセージは「内部者が見限った」との印象に傾きやすく、同社に対する信任の揺らぎを露呈する事象であることは間違いない。

Redburnが示す160ドル予想と業績鈍化への市場の警戒感

Redburn Atlanticのアナリスト、エイドリアン・ヤノシク氏は、テスラの今後の業績に対して厳しい見通しを示し、同社株が160ドルまで下落する可能性に言及した。米中関係の悪化による関税の影響や、IRA税制優遇の不透明性などが主因とされており、それらが販売動向に直接打撃を与えるとの懸念が広がっている。彼の予測が正しければ、現在の株価から40%以上の下落が現実味を帯びることになる。

また、同社のモデルY刷新や低価格帯EVの導入といった戦略的打ち手についても、短期的な需要喚起には結びつかないとの見解が強まっている。特に廉価版の新型テスラに対する市場の期待感は限定的で、競争激化とマージン低下がかえって収益性を損なうとの指摘もある。テスラは過去において成長株として圧倒的なプレミアムを享受してきたが、今後はその評価軸が根本から見直される局面にある。

現在、ウォール街全体としてもテスラ株に対する評価は「ホールド」に留まっており、平均目標株価は283.14ドルにとどまる。この水準は現行株価と比して明確な上昇余地がないことを示しており、リスク調整後リターンの観点からも買い推奨が広がる兆しは乏しい。市場は既に楽観から慎重へと重心を移しており、機関投資家のスタンス転換が株価に与える影響は今後一層注視されることになる。

Source:Barchart.com