ライドシェア最大手のウーバー・テクノロジーズが、フォルクスワーゲンと提携し米国で自動運転車の展開を本格化させると発表した。完全自動運転のID. Buzz ADをロサンゼルスから導入し、2026年の商用サービス開始を目指す。これにより、ウーバーは次世代モビリティにおける先導者としての地位を強化しつつある。
一方、テスラは2025年に入り業績と株価の下落が続き、成長減速と利益率の悪化が懸念されている。市場の評価は二極化しており、ウーバー株にはアナリスト47人中35人が「強い買い」と強気姿勢を示す一方、テスラへの評価は慎重姿勢が目立つ。ウーバーの戦略的展開と好業績が続けば、短期的にはテスラよりも投資妙味が高まる可能性がある。
ウーバーが描く次世代モビリティ戦略の全貌と収益構造の進化

ウーバー・テクノロジーズは、フォルクスワーゲンとの提携を通じて、ロサンゼルスを皮切りに自動運転車の本格導入に乗り出す。ドイツ製の全電動バン「ID. Buzz AD」を用い、2025年後半に試験運用を開始、2026年には商用展開へ移行する計画である。
このパートナーシップは、単なる配車サービスを超えたモビリティ事業の転換点と位置付けられる。特に注目すべきは、移動手段の自動化と電動化が同時に進行する点であり、ウーバーのプラットフォーム上での収益性と運用効率の向上が期待される。
同社の2025年第4四半期決算では、売上高が前年比20%増の120億ドル、EPSは3.21ドルと、市場予想(0.50ドル)を大幅に上回る成果を記録した。モビリティ部門は前年同期比25%増、フードデリバリーは21%増、貨物部門は安定を維持しており、収益源の分散も着実に進んでいる。将来的に自動運転車が人件費を抑える要素となれば、これら各部門の利益率向上にも資する可能性がある。
もっとも、自動運転車の商業化には技術的・法規制的な課題が依然として存在する。実証実験から本格運用までの道のりには不確定要素が付きまとうが、ウーバーは既存の配車網という強みを活かして、新技術のスムーズな市場展開を図っている。AIとの融合を含めた今後の実装戦略次第では、同社の競争優位性はさらに強化されると考えられる。
テスラ株の割高感と成長鈍化が与える市場評価への影響
2025年に入り、テスラ(TSLA)の株価は年初から30%以上下落し、時価総額は9,400億ドル規模を維持しつつも、成長減速に対する懸念が市場に広がっている。同年第1四半期の業績は、売上高が193億ドルと前年同期比9%減、アナリスト予想の213億ドルに届かず、EPSは0.27ドルと前年比40%減を記録した。自動車部門の売上は20%減の約140億ドルにとどまり、モデルYの刷新を巡る工場アップグレードや販売インセンティブの増加が重しとなった。
さらに、現在のテスラ株は予想収益の200倍、売上高の9.4倍という高いバリュエーションで取引されており、業界中央値(それぞれ14.36倍、0.80倍)との乖離が目立つ。この数値は、市場が依然として同社の長期的技術リーダーシップに期待を寄せていることを示すものの、短期的な業績悪化が投資判断に陰を落としていることも否めない。
アナリストの評価も分かれており、41人中16人が「強い買い」、13人が「ホールド」、10人が「強い売り」としており、確信を欠いた見方が多数派である。テスラは第2四半期に向けて成長見通しの再提示を行う意向を示しているが、それまでの間は不透明感が投資家心理に影を落とし続ける公算が大きい。マスク氏の下での製品開発は革新性を保っているものの、実績と将来像の乖離が株価の重石となっている。
投資妙味はウーバー優勢との見方が優勢に転じつつある理由
市場における投資家の姿勢は、現時点ではウーバーに傾きつつある。テスラが直面する成長減速、利益率低下、割高な評価指標は、短期的には買い材料として機能しにくい。一方、ウーバーは各事業部門が堅調に成長しており、特に2025年のモビリティ部門の売上が69億ドル(前年比25%増)に達するなど、サービスの基盤が拡充されている。自動運転への本格参入は、長期視点での収益モデルの高度化を予感させる。
株価指標も現実的な水準で、将来収益の31.3倍、売上高の3.70倍と、テスラほどの割高感は見られない。アナリスト47人のうち35人が「強い買い」と評価しており、平均目標株価は89.43ドル、最高値予想は115ドルと、現在株価からの上昇余地も明確である。5月7日の第1四半期決算発表を控えた現在、短期的には買い需要が増す可能性がある。
ただし、ウーバーが新たに踏み込む自動運転分野には、コスト・法規制・事故リスクなど複合的な課題が残るため、過度な楽観は戒める必要がある。とはいえ、現時点の成長性、収益性、そして戦略展開の巧妙さを踏まえると、投資家がリスクを織り込んだ上でウーバーを優位視する傾向が強まっているといえる。テスラと比較した際の期待値のバランスが、投資判断を左右する鍵となるだろう。
Source:Barchart