Microsoftは、Windows 11 24H2向けに提供した更新プログラムKB5055627(Build 26100.3915)において、ファイルエクスプローラーの起動性能を向上させた。公式リリースノートに性能向上の明記はないが、実機テストでは「ホーム」タブ起動時の待機時間が顕著に短縮されたことが確認された。
改善の背景には、WinUIベースのモダンUIコンポーネント導入やMicrosoft 365との統合など、複雑化したアーキテクチャが存在していた。今回のアップデートでは内部コードの最適化により、遅延の要因であった同期処理やシェル拡張の読み込みにかかる負荷が軽減されたとされる。
当該更新は現在オプション扱いだが、2025年5月13日の定例更新(Patch Tuesday)において強制配信が予定されており、多くの環境で改善効果が波及する可能性がある。
ファイルエクスプローラーの遅延解消はWinUI再構築とクラウド統合が鍵

Windows 11 KB5055627(Build 26100.3915)の導入により、長年ユーザーの不満とされてきたファイルエクスプローラーの初期読み込み遅延が大幅に軽減された。Microsoftはこの改善について公式にパフォーマンス強化とは明言していないものの、実地検証では明確な速度向上が認められており、なかでも「ホーム」タブを初期表示とした際の待機時間短縮が顕著である。
背景には、WinUIフレームワークを用いたエクスプローラーの再設計と、Microsoft 365との統合強化がある。これにより、リボンUIやファイル横のクラウド同期アイコン、COMオブジェクトといった複数の処理が複雑に絡み合い、従来の即時表示に支障をきたしていた構造が明らかとなった。特に、「読み込み中…」の表示や、リボン表示の遅延はこの統合化に起因する。
今回の修正では、これら複数の要素を最適化し、起動時の読み込みプロセスの順序や軽量化が図られたものとみられる。単なるバグ修正ではなく、設計思想そのものの見直しがなされた点が注目に値する。
オプション更新の位置づけと強制配信に見るMicrosoftの意図
KB5055627は当初「オプション更新」として提供されたが、5月13日に予定されているPatch Tuesdayではセキュリティ更新に含まれた形で強制適用される見通しである。この運用方法は、Microsoftが本更新を単なる任意の改善ではなく、OS全体の使用感に関わる必須修正と位置付けている証左といえる。
Windows Updateにおいては、通常、安定性が確認されていない更新をまずオプションとして公開し、一定期間のフィードバック収集を経て、広範なユーザーに展開するという手法がとられる。KB5055627も同様のプロセスを踏んでおり、複数のマシンにおける検証で大きな不具合が報告されなかったことで、5月の定例更新に統合されたと判断できる。
特筆すべきは、ファイルエクスプローラーというOSの根幹機能に関する更新を、Microsoftがリスクを取ってまで全ユーザーに自動配信する点にある。これは、パフォーマンス向上を通じたユーザー体験の再定義を狙った構造的施策の一環であり、単一のバグ修正に留まらない影響を及ぼす可能性がある。
Microsoft 365統合による提案機能とUX再構築の可能性
今回の更新には、ファイルエクスプローラーがMicrosoft 365コンテンツを直接サポートするようになったという重要な変化も含まれている。これにより、ユーザーは「ホーム」タブから直接、関連性の高いファイルや共有ドキュメントの提案を受け取ることが可能となり、従来のスタンドアロン型ファイル管理から脱却する流れが加速している。
こうした設計は、従来のフォルダ階層構造を前提とした運用を変革し、クラウドベースの情報接点を起点とする新たなUI/UX像を提示するものと位置付けられる。Microsoftとしては、TeamsやOneDrive、SharePointといった既存クラウド基盤との連携を通じ、ファイルアクセスの在り方を根底から再設計する意図があると推察される。
ただし、この変化は読み込み遅延やUIの複雑化という新たな課題をもたらした事実も見逃せない。パフォーマンス改善が実現されたとはいえ、即時性と機能性のバランスをどこに置くかという設計思想の再構築が今後の焦点となる。クラウド統合は利便性を高める一方で、従来型の操作に慣れた利用者にとっては新たな学習コストとなる側面もある。
Source:Windows Latest