AMDがモバイル、デスクトップ、ワークステーション、データセンター向けに展開予定の次世代CPUラインアップが判明した。Gorgon PointはZen 5アーキテクチャに基づき、デスクトップ向け「Ryzen 9000G」としてAM5ソケットで登場。RDNA 3.5搭載の統合型APUを特色とし、モバイル版は最大12コアの構成が想定されている。
また、FF5ソケット採用のSoundwaveはZen 6アーキテクチャを採用し、2高性能+4高効率のハイブリッド設計が見込まれる。ワークステーション分野では最大96コアのShimada Peak、データセンター向けにはFL1ソケットのEPYC Fire RangeやAM5対応のGradoが控える。
今回のリークは、各ソケット仕様や製品コードネームを通じて、AMDの中長期的な製品戦略と市場セグメント別の棲み分け方針がより鮮明になったことを示している。
Gorgon PointとRyzen 9000Gが示す次世代APU戦略の進化

Zen 5アーキテクチャを採用したGorgon Pointは、AMDがモバイルおよびデスクトップ市場においてパフォーマンスとグラフィックス処理を両立させる新たな方向性を打ち出す存在である。
Ryzen 9000Gシリーズとして展開されるデスクトップ版は、既存のAM5ソケットに対応し、RDNA 3.5アーキテクチャを組み込んだ統合グラフィックスを搭載している点が特徴だ。これにより、単体GPUに依存せず高性能なビジュアル処理を可能とするハイエンドAPUが構築されている。
一方、モバイル版のGorgon Pointは、最大12コアのGorgon Point 1から6コアのGorgon Point 3まで、三段階のラインアップで展開されると見られる。FP8ソケットの採用により、既存のStrix PointやKrackan Pointとソケットレベルでの互換性を維持しており、製品群の整理が進む一方で、リフレッシュ版との混在により混乱を招く懸念も否めない。AMDは統一性と差別化の両立という課題に直面している。
この展開は、消費電力効率と統合性能の最適解を模索するモバイル市場において、Zen 5ベースのAPUを核とした提案力の強化を図る戦略と重なる。プロセス技術やGPU性能の進化を背景に、エントリー層からハイエンド領域まで広範な需要に対応しようとする構図が浮かび上がる。
SoundwaveとShimada Peakが指し示すZen 6世代の布石
Zen 6アーキテクチャを採用する予定のSoundwaveおよびShimada Peakは、AMDが次の技術世代への橋渡しを行う上で極めて重要な位置付けを持つ。SoundwaveはFF5ソケットを採用し、2つの高性能コアと4つの高効率コアからなる6コア構成を採る可能性が示唆されており、x86市場におけるハイブリッド構造の本格導入を加速させる要素となり得る。
また、Shimada Peakは最大96コアを搭載する「Threadripper 9000」シリーズとして展開される見通しであり、演算能力が求められるプロフェッショナル用途に対して極めて高い訴求力を持つ。特に、12コア構成の廉価モデルの存在が報じられており、ハイエンドだけでなくコスト意識の高い中間層の市場も視野に入れた製品戦略が透けて見える。
このような二極的製品展開は、今後のZen 6アーキテクチャによる市場拡張のための試金石となるだろう。高度な演算性能と柔軟な製品構成を両立させることにより、AMDはワークステーションからコンパクトなクライアント機まで一貫したアーキテクチャ戦略を構築しようとしていることがうかがえる。
EPYC GradoとFire Rangeに見るデータセンター戦略の多層化
AMDは、データセンター市場における製品群の細分化を進めており、その中核を成すのがEPYC GradoとFire Rangeである。
前者はAM5ソケットに対応し、Zen 5ベースの「EPYC 4005」シリーズとして登場予定で、コスト効率を重視したデスクトップベースのデータセンター向けソリューションを指向している。後者のFire RangeはFL1ソケットを採用し、モバイル用途に特化したEPYCファミリーの新たな選択肢として位置づけられる。
これらの製品は、用途別の性能・消費電力要件に対応した柔軟な設計思想を反映しており、従来の高密度・高スループット重視のサーバー市場から、分散型・省電力型のクラウドインフラまでを視野に入れた構成であると読み取れる。ソケットや命名規則の整理も進められており、プラットフォームごとの明確な使い分けが進行している点も注目に値する。
この動きは、AMDが単一のEPYCブランド内で複数の市場ニーズに対応するポジショニングを志向している証左といえる。Zen 5世代を軸に据えながらも、今後のZen 6製品とのシームレスな移行を視野に入れた布石と見ることもできるだろう。
Source:Wccftech