ValveはSteam向け互換レイヤー「Proton」の最新ベータ版となるProton 10 Beta 1を公開した。Microsoft Flight Simulator 2024やNo Man’s Sky VRモードなど、話題性の高いタイトルを含む14作品が新たに動作対象に加わり、ゲームプレイ環境の拡充が図られた。
併せて、32論理コア以上のCPU環境における処理トポロジーの不具合や、Intel・AMD GPUに起因するクラッシュ、Steam Deck上の音声ノイズといった深刻な技術的問題が修正され、安定性と互換性の大幅な向上が確認された。
DXVKやvkd3d-protonなどのグラフィックスAPIも最新版に更新されており、映像表現やVR対応の品質向上も見込まれる。今後の正式リリースに向け、動作報告と検証がコミュニティ内で活発化する可能性が高い。
Proton 10 Betaが対応拡大した14タイトルとその技術的背景

今回のProton 10 Beta 1により新たに対応が加わったタイトルには、「Microsoft Flight Simulator 2024」や「THE KING OF FIGHTERS XIII GLOBAL MATCH」など、ジャンルや技術要件の異なる計14本が含まれている。中にはVRモードで再対応が必要とされた「No Man’s Sky」や、過去に互換性問題が報告されていた「X Rebirth VR Edition」など、プレイヤーからの要望が高かった作品も名を連ねている。
この対応拡大の背景には、vkd3d-protonやDXVKといった中核コンポーネントの更新があり、Direct3D 12や11の翻訳性能が引き上げられたことが寄与している。
特に「libvkd3d-shader」の強化により、高度なシェーダー処理を必要とする大規模タイトルへの対応が現実的となった。また、ビデオ再生処理の改善により、「SOULCALIBUR VI」や「Greedfall」など、過去に映像再生に支障を来していたタイトルの品質も向上している。
この一連の更新は、SteamOSやLinux環境下でのプレイ可能タイトル数を着実に増やすものであり、PCゲームの分散化という観点でも注視に値する動向といえる。
高性能CPU環境やGPU固有の不具合修正が示す運用最適化への本気度
Proton 10 Beta 1では、32論理コア以上のCPUに関して処理トポロジーの設定不具合が修正された。これは、近年のHEDT(ハイエンドデスクトップ)環境やワークステーション用途で導入が進む多コアCPUにおいて、ゲームの初期化や安定動作に影響を与えていた問題である。
合わせて、IntelおよびAMD GPUで発生していた複数タイトルのクラッシュや描画異常への対応も実施され、ドライバーレベルの挙動に踏み込んだ調整が行われている。
また、「Assassin’s Creed Shadows」におけるSteam Deckでの音声ノイズ問題や、「Final Fantasy XVI デモ」のドライバー警告修正、「Ubisoft Connect」連携の挙動最適化など、特定プラットフォームや配信サービスとの統合性向上も図られている。これらの対応は、単なるゲーム互換レイヤーの域を超え、OS・ドライバ・ハードウェアの交差点における最適化を目指す方向性を示している。
Valveの本取り組みは、Steam Deckを軸とした独自エコシステム拡張の一環であり、Linuxベースのゲームプレイ環境を本格的な市場選択肢とする戦略の深化を物語るものである。
Source:Neowin