ウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイは、エネルギー中流、公益事業、金融分野に大規模な投資を行っている。これらの分野は、安定的かつ長期的な収益源を重視するバフェットの投資哲学と一致しており、投資家にとっても有力な視点を提供する。
実際に彼が保有していないものの、同様の特徴を持つ企業としてエンブリッジ(配当利回り5.7%)、ブラックヒルズ(同4.4%)、トロント・ドミニオン銀行(同4.8%)が候補に挙げられる。いずれも高配当でありながら、長期の成長ポテンシャルや構造的な安定性を持ち、逆風下でこそ注目される銘柄といえる。
バフェットが好む中流エネルギーの構造的優位性

バークシャー・ハサウェイが注力する中流エネルギー分野は、価格変動の激しい原油生産とは一線を画し、安定収益を生むビジネスモデルとして長年信頼を集めてきた。オキシデンタル・ペトロリウムやシェブロンなどの保有株とは異なり、同社が中核に据えるのはパイプラインや貯蔵事業といった“通行料型”モデルである。この点において、カナダのエンブリッジは極めて好例といえる。配当利回りは5.7%に達し、30年連続の増配実績と1,500億カナダドル規模の資本支出計画によって将来の安定成長が裏付けられている。
エンブリッジは急成長を目指す企業ではないが、それゆえに経済の変動にも左右されにくい。成熟したインフラ資産を保有し、規制下の安定的な収益モデルを築いていることから、保守的な投資家にとっては信頼に足る選択肢となる。中流事業は市場全体が下落しても配当水準を維持しやすく、バフェットが掲げる「予測可能な収益」と「資本の安全性」という二大原則に合致している。現時点でエンブリッジ株を保有していないものの、その企業特性はバフェットの思想を強く体現している。The Motley Fool
規制業種としての公益事業が持つ防御力と持続性
バークシャー傘下のエネルギー関連企業には公益事業が多く含まれ、これは地域独占と規制下での料金調整によって安定成長が期待できる特性に起因する。中でも米国の小規模公益会社であるブラックヒルズは注目に値する。市場規模は約40億ドルと大きくはないが、55年連続で配当を増やしており、「配当王(Dividend King)」の地位を確立している。現行の配当利回りは4.4%であり、インフレや金利上昇局面でも一定の保護効果が期待できる点は見逃せない。
加えて、同社の顧客基盤は全米平均の3倍の速度で拡大しており、それが将来的な設備投資と料金引き上げ余地を裏付けている。規制業種であるため利益上限がある反面、不況耐性が極めて高く、経済が冷え込む局面でも業績の大幅な悪化を回避できる。バフェットが好む「予見性ある利益成長」の観点から見ても、公益事業は理にかなったセクターであり、ブラックヒルズのような銘柄はポートフォリオにおける安定的な柱となり得る。
問題抱えるトロント・ドミニオン銀行に潜む逆張りの妙
金融危機時にバンク・オブ・アメリカに出資し、大きな利益を得たバフェットの過去の行動は、「不人気銘柄に光を見る」逆張り投資の一例である。その思想に沿えば、現在のトロント・ドミニオン銀行(TD)は注目の対象となる。カナダで最大級の銀行でありながら、米国部門でのマネーロンダリング問題によって資産上限を課されており、成長が一時的に制限されている。その影響で株価は2022年のピークから約25%下落し、現在の配当利回りは4.8%に達している。
ただし、カナダ国内の銀行業は規制が厳しく寡占状態にあるため、基盤は極めて強固である。問題のある米国部門に対しても改善措置が講じられており、将来的な制限解除が現実的視野に入る。これは過去にバフェットが見出した「一時的な誤算による過小評価」に通じる構図であり、長期投資家にとっては機をうかがう局面といえる。確実性こそ低いが、構造的な優位性を有する大手銀行が市場に見放されている今、冷静な判断をもって臨むことが求められる。
Source:The Motley Fool