ドナルド・トランプ大統領が2025年4月に発表した「リベレーション・デー関税」により、S&P500指数は5日間で12%急落し、市場は大混乱に陥った。これに先立ち、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、VanguardとSPDRのS&P500インデックスETFをすべて売却し、ドミノ・ピザ株への投資を拡大していた。

バフェットは「S&P500を上回るパフォーマンスを追求する」という信条のもと、ごく小規模なインデックス投資を整理したものであり、米国経済への信頼を失ったわけではないと説明している。一方、ドミノ・ピザはAI活用や配達手法の革新を強化し、今後も年間1100店舗以上の拡張を目指す「Hungry for More戦略」によって市場支配力を高めている。

第4四半期決算では期待を下回ったものの、売上3%増・利益9%増を達成し、競合他社を凌ぐ成長を示した。現在の株価は割高感があるが、将来的な収益拡大を織り込んだ投資判断が求められる局面である。

バフェットがインデックスファンドを売却した本当の理由

ウォーレン・バフェットはかねてよりS&P500インデックスファンドの保有を推奨してきたが、バークシャー・ハサウェイは2024年第4四半期に、保有していた「Vanguard S&P 500 ETF」と「SPDR S&P 500 ETF Trust」の全ポジションを解消した。売却総額は全ポートフォリオの0.02%未満に過ぎず、米国市場への信認を損なう意図は見受けられない。むしろ注目すべきは、過去に自身が述べた「S&P500を超えるリターンを追求する」という哲学の下、インデックスファンドの分散性が逆に足かせとなっていた点である。

また、2025年4月2日に発表されたトランプ前大統領の「リベレーション・デー関税」が市場を揺るがし、S&P500が5日間で12%下落する中で、事前に保有比率の見直しがなされていたことも重要な事実である。市場の変動に対し、ポートフォリオ内の非本質的な構成銘柄を削減するのは合理的な資本配分の一環といえる。

ただし、この売却が短期的な相場予測や消極的判断に基づくものとは言い切れず、あくまで長期的な相対的リターンの最大化を目的とした微調整である点を見落としてはならない。市場全体に対する悲観ではなく、むしろ選別と集中の意志が明確に表れた判断と読むべきだろう。

ドミノ・ピザに見る非伝統的成長戦略とAI導入の先進性

バークシャー・ハサウェイがポートフォリオの中で強化した銘柄のひとつが、ドミノ・ピザ(NASDAQ: DPZ)である。同社の株価は過去10年間で375%上昇し、特に近年はAIを用いたオペレーション効率の向上とデジタル化戦略で際立つ。注文プロセスにおけるAnyWare技術は、テキストメッセージやSNS、スマートスピーカー経由での注文を可能にし、さらにAIによる需要予測でオーダー前に商品を準備する「予知的製造」まで導入している。

加えて、2023年に打ち出した「Hungry for More」戦略では、年1100店舗以上の出店と7〜8%の売上・営業利益成長を掲げ、Uber EatsやDoorDashとの連携も推進。デリバリー市場におけるシェア拡大に加え、同業他社を圧倒する既存店売上の伸びが続いている。第4四半期決算では市場予想を下回ったものの、売上は3%増、純利益は9%増と着実な成果を残した。

とはいえ、株価収益倍率(PER)が29倍に達している現状では、期待成長を織り込んだ水準ともいえる。中長期的な成長が現実に伴うか、投資家は財務数値の裏付けを見極める冷静な姿勢が求められる局面にある。バフェットの選好が示すのは、単なる小売業としての評価ではなく、テクノロジーを駆使した食産業の新たな競争軸への期待であろう。

Source:msn