アーク・インベストのキャシー・ウッドが4月末に買い増しを行ったのは、AMD、Shopify、Intellia Therapeuticsの3銘柄である。特に注目されるのは、AI需要で売上加速が続くAMDと、CRISPR技術で再評価されつつあるIntelliaだ。

両社とも割安な水準にあるとされ、将来的な成長に対して高い期待がかかる。Shopifyも継続的な成長を見せているが、短期的には消費者心理の低下が懸念材料となっている。ウッドの積極的な買い姿勢は、現在の相場における中長期視点の投資チャンスを映し出すものといえる。

成長加速にも関わらず低迷するAMD株 AI特需と割安感に賭けるウッドの思惑

キャシー・ウッドが最も注目した銘柄は、半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)である。来週発表予定の第1四半期決算では、売上高が前年同期比30%増の71億ドルに達する見込みであり、これは過去3年間で最大の成長幅となる。利益面でも同様に伸長が見込まれ、1株当たり利益は0.94ドルと、前年比52%増を予想。過去4四半期にわたって成長ペースが加速している点も、今後の展望を支える重要な材料である。

それにもかかわらず、過去1年でAMD株は40%以上下落しており、MI308Xプロセッサーの中国輸出禁止による8億ドル規模の打撃が市場心理に影響を及ぼしている。ただし、今回の損失は次回の決算には反映されない予定であり、一過性の要因との見方も根強い。AI向けチップやデータセンター需要の拡大を背景に、構造的な成長基盤は揺るぎないものとなっている。

ウッドがこの局面で買い増しに動いた背景には、22倍(今期予想)というPERの割安感がある。来期予想では16倍となり、成長率を加味すれば依然として魅力的な水準だ。半導体は景気変動の影響を受けやすい業種ではあるが、足元の成長モメンタムが継続する限り、相場の評価修正が起きる余地は十分にある。投資家の視線がリスクよりも収益性に転じたとき、株価は再び大きく跳ねる可能性があるだろう。

Shopifyの持続的成長と足元の懸念 消費者心理の揺らぎが示す逆風

Shopifyは、起業家や中小ブランドに向けたEコマースプラットフォームを展開し、10年以上にわたって年率20%以上の成長を続けてきた稀有な企業である。今回の第1四半期決算でも、売上・利益ともに前年同期比25〜30%の増加が予想されており、その成長性はなお健在である。物流事業からの撤退を経ても業績は安定しており、Shopifyのコアビジネスが依然として強固であることを示している。

一方で、アナリストの間では消費者信頼感の低下が短期的な売上に影響を及ぼすとの懸念も強まっている。これを受け、複数の機関が目標株価を引き下げる動きに出ていることは無視できない現実である。コスト削減や製品機能の強化といった企業努力が続いているにもかかわらず、マクロ環境の変化が業績予想に及ぼす影響は見通しを曇らせている。

それでも、創業者であるトビ・リュトケCEOのもとで推進されるプロダクトの多角化や、AIを活用したサービスの自動化によって、Shopifyは依然として市場の成長期待に応えるポジションにある。過去2年で1兆ドルの取引のうち半分を処理した事実が、同社の勢いとユーザー基盤の強さを物語っている。短期的には調整があっても、中長期では構造的な強さが評価される局面は訪れるだろう。

CRISPR技術に賭けるIntellia Therapeutics バリュエーションと臨床開発の両輪

遺伝子編集技術を駆使するバイオテク企業Intellia Therapeuticsが、キャシー・ウッドの買い増し対象に含まれたことは、市場がバイオ医療の将来性に再び目を向け始めた兆しともとれる。Wolfe Researchのアナリスト、アンディ・チェン氏は先週、同社の格付けを「アウトパフォーム」に引き上げ、21ドルという目標株価を提示した。これは現在の株価から2倍以上の上昇余地があるとされ、投資妙味の高さが浮き彫りとなっている。

同社の強みは、CRISPRベースの遺伝子治療という先端領域で第3相試験を進めており、その研究開発が順調に推移している点にある。特筆すべきは、時価総額8.5億ドルに対し、キャッシュリッチな財務構造から実質的な企業価値(EV)は2億ドルを下回るとされる点である。この極端なディスカウントが、ウッドにとって絶好の投資機会と映ったとみられる。

とはいえ、バイオテクノロジー株はボラティリティが極めて高く、規制当局の承認や臨床試験の成否といった不確定要素に大きく左右される。したがって、現段階では過度な楽観は禁物であり、リスク許容度の高い投資家層向けといえる。ただし、ポートフォリオの中でテクノロジーと医療の融合領域を担う存在としては、将来性という観点で一定の評価を与えるに値する。市場が割安株を見直す局面では、同社のようなテーマ株が台頭する可能性も否定できない。

Source:The Motley Fool